米グーグル(Google)の軍門に下るわけにはいかない――。そんな思いがにじむ決断である。街づくり事業に関する合弁会社の設立を決めたトヨタ自動車とパナソニック。この領域ではGoogleをはじめとするIT企業が大きく先行しており、日本を代表する2社は手を組んで対抗する。
トヨタとパナソニックは2019年5月9日、街づくり事業に関する新会社「プライム ライフ テクノロジーズ」を設立すると発表した(図1)。最大の狙いは、都市に関する様々なデータを集約して価値を生む「街プラットフォーム」の構築だ。様々なサービスの源泉となるデータの確保を急ぐ。
新会社の社長に就任するパナソニック専務執行役員の北野亮氏は同日開いた記者会見で、「他に類をみない街全体での新たな価値を創出していく」と意気込んだ。目指す街づくりの姿として「(居住空間を)日々アップデートし、居住者に満足感を与え続けること」を挙げた。
こうした理想を実現するためには、居住者の行動履歴や家電の利用状況、車両の位置情報などのデータを細かく把握する必要がある。プライム ライフ テクノロジーズは、都市を構成するあらゆるデータを収集・蓄積する街プラットフォームの構築を目指す(図2)。
人々の暮らしを支える全てのモノやサービスを情報でつなげ、クルマを含めた街全体を管理する構想を、トヨタ社長の豊田章男氏は「コネクテッドシティー」と表現する。前日に開いた決算会見で豊田氏は、コネクテッドシティーにおいては「競争と協調のうち、特に協調の精神が重要になってくる」と指摘していた。パナソニックと組むことで、トヨタの事業を「クルマ単体ではなく、社会全体という視野で考えるようにする」(豊田氏)ことを狙う。