日本ユニシスがスマートフォンを活用したVR(仮想現実)ゴーグルでモデルハウスを疑似体験するサービスを強化している。現在12棟のモデルハウスを22年度までに1500棟に増やす。狙いは旧来の販売手法が通じない20代から30代半ばの「ミレニアル世代」。時間と空間を超えて顧客にアプローチできるVRモデルハウスは、地場ハウスメーカーが大手に挑む武器となる。
窓際の観葉植物までの距離感や壁際に設置したテレビの大きさなど、VR(仮想現実)ゴーグル越しに広がる仮想世界を見渡すと、図面や写真では分からない建物の雰囲気が伝わってきた。記者が体験したのは、日本ユニシスなどが開発した仮想住宅展示場「MY HOME MARKET」内のVRモデルハウス。千葉市のハウスメーカー、新昭和ウィザーズ東関東が仮想空間に設置した“商品”だ。
MY HOME MARKETには現在、4社の地場ハウスメーカーが参加している。19年6月までに新しく2つの会社が加わる。日本ユニシスは将来的に、地域金融機関のネットワークを活用して用地提供や住宅ローンの提供を進めるビジネスモデルを構築する考えだ。現在見学できるVRモデルハウスは12棟。22年度までに1500棟のVRモデルハウスの展示を目指している。
VR空間はMY HOME MARKETのウェブサイトで閲覧できる。スマホ画面を2分割で表示すれば、市販のVRゴーグルにスマホをセットするだけでモデルハウスの疑似体験が可能だ。仮想の街に入ると、建物の価格を示した値札が付いた住宅が並ぶ。こうしたVRモデルハウスは、「セミオーダー型規格住宅」と呼ばれる。家の外観や間取り、内装などの種類を絞り、販売価格を可視化した住宅だ。
日本ユニシスは2017年に仮想住宅展示場を構築・運用するためのシステムを開発しており、VRモデルハウスを提供するハウスメーカーを募ってきた。プロジェクトを担当した多勢正英グループマネージャーは、「セミオーダー型規格住宅のVRモデルハウスは、ミレニアル世代の需要に焦点を絞ったもの」と話す。ミレニアル世代とは2000年代(ミレニアル)に成人する世代で、現在の年齢で20代から30代半ばとなる。情報を積極的に集めて学習するこの世代には、従来型の住宅販売の手法がそぐわない例が多い。
例えば価格交渉。ハウスメーカーが住宅を販売する場合、まず建築概要について詳細を詰めた後に価格を相談するのが一般的だ。ミレニアル世代は最後に見積もりを出すまで価格が分からない不安感を敬遠する傾向にあるという。
VRモデルハウスには既に値札が付いており、床や壁紙を変更すると追加の価格が明示される。各種部材の選択肢は、ほぼ3種類。多勢グループマネージャーは「部材選択の幅をあえて絞った。選択肢が多過ぎると購入の意思決定に時間がかかって、買う意思を失うこともある」と話す。