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 また、デジタル手続法は政府に情報システム整備の計画を立てさせる義務を課し、内閣総理大臣が計画を公表する。計画にはデジタル申請や添付書類の削減、データ標準化や外部連携機能、システム共用化などについて記載する。国の行政機関などはITを活用した行政の推進状況についてインターネットで随時公表する。

 デジタル手続法は府省庁がばらばらに要求しているIT調達予算について一元化する規定を付則に盛り込んだ。IT総合戦略本部は既にIT調達を巡って財務省と交渉を始めた。ある政府関係者は「各府省庁のIT調達関係部署を内閣官房IT総合戦略室の併任とする」という構想もあると明かす。

 政府内にはアジャイル開発やクラウドサービスを利用しやすい契約形態の検討や、随意契約でシステムなどを調達する際に多数のベンダーの見積書が必要になるといった調達を巡るルールの見直しを求める声もある。

 デジタル手続法は行政手続きと密接に関連する民間手続きも一括してデジタル化して行えるように努力義務を盛り込んだ。2019年度から転居の際にネットで住民票の移転手続きの準備をすると電気やガス、水道といった契約の変更もできるようにする。ただ、法律はあくまで企業に「必要な情報の提供、助言その他の援助を行う」と規定したものなので、実際には民間の取り組み次第となる。

デジタル化の抜け穴や省庁間の壁も

 一方で、同法にはデジタル化の例外規定も残る。「対面により本人確認をするべき事情」や申請などの書面で「原本を確認する必要があるものがある場合」など、省令で定める場合はデジタル化の例外にできる。各省の裁量で定めることができる省令による例外規定が、既存の手続きをデジタル化しないまま残すための抜け穴になりかねない。また、手続きのデジタル化によって既存の手数料を下げるかどうかは規定していない。

 省庁間の壁も課題となりそうだ。縦割り行政の弊害がデジタル化の進展を妨げる恐れがある。

 例えば行政手続きのデジタル化で先行するのは経済産業省だ。経産省は2019年2月から企業など法人による行政手続きで、マイナンバー制度の法人番号を活用して1つのIDとパスワードの組み合わせで複数の行政サービスにアクセスできる法人共通認証基盤(gBizID)の運用を始めた。2020年以降は政府全体に広げる計画だ。

法人共通認証基盤(gBizID)のWebサイト
法人共通認証基盤(gBizID)のWebサイト
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 また経産省は2019年9月に企業向けの補助金申請システム(jGrants)も運用を開始する。従来は補助金ごとにばらばらに整備していた申請システムを汎用化し、職員がフォームを作れば申請窓口をすぐ立ち上げられる仕組みだ。2020年度から一部の省庁や自治体も利用できるようにする。

 しかし自治体関係者には戸惑いの声もある。ある自治体のIT関係者は「自治体は総務省が進めるものがすべて」と明かし、総務省の意向を無視して経産省が整備したシステムを利用しにくい実態があるという。

 政府はデジタル手続法で規定された内容を例年6月にまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)などに反映する。政府のデジタルファーストは進むのか。初年度に盛り込む施策が先行きを占う試金石になりそうだ。