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 日立製作所はデザイン思考を実践できる人材「デザインシンカー」の育成を急ピッチで進めている。習得するデザイン思考のスキルの高さに応じて、育成レベルを3段階に定義。「プロフェッショナル人財」と呼ぶ最も高いスキルの人材を、現在の200人から2022年3月までに500人に倍増させる。

 デザイン思考は新しい顧客体験やサービスを創り出すための方法論。デジタル化プロジェクトの最上流工程で、ユーザーが潜在的に抱えている問題を発見したり、その解決方法を考えたりするのに向くとされている。

 日立がデザインシンカーを増員させる理由は、デジタル化案件の獲得を強化するため。「デジタル化をどう進めればよいのか分からない、何が課題なのかすら自社で把握できない、といった声をお客様からよく聞くようになった」とデザインシンカー育成プログラムを統括する、豊田誠司サービスプラットフォーム事業本部デジタルソリューション推進本部シニアエクスペリエンスデザイナーは言う。

 何をすればよいか分からない顧客に対して、従来型のシステム開発のように要求が出るのを待っていてはプロジェクトが始まらない。デジタル化のニーズが高まっているのに、これでは機会損失だ。そこで、課題の発見や解決策の考案ができるデザインシンカーを育成することにした。

日立製作所の豊田誠司サービスプラットフォーム事業本部デジタルソリューション推進本部シニアエクスペリエンスデザイナー
日立製作所の豊田誠司サービスプラットフォーム事業本部デジタルソリューション推進本部シニアエクスペリエンスデザイナー

 例えば、顧客企業の内部人材だけでは思いつかないような新サービスを考案するプロジェクト。もしくは、顧客企業の担当者自身が気付いていなかった潜在的な課題を発見して解決策となる新しい業務プロセスを導き出すような案件だ。こうしたプロジェクトにデザインシンカーを投入する。

 デザインシンカーの育成の方法はこうだ。日立ではデザインシンカーを上級の「プロフェッショナル人財」、中級の「ベーシック人財」、初級の「デザインシンキング理解者」の3階層で定義。それぞれの階層に向けて研修を用意する。

デザインシンカーの育成計画
デザインシンカーの育成計画
(日立製作所の資料を基に日経 xTECH作成)
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 プロフェッショナル人財については、1年間の「特別業務研修(特修)」で育成する。特修は座学と実案件のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を組み合わせた講座。「既に高いスキルを持つデザインシンカーに受講生を弟子入りさせ、実践を通じて育てる」(豊田シニアエクスペリエンスデザイナー)。

 特修の座学では、ワークショップのファシリテーションやインタビューのスキルなどを学ぶほか、デザインシンカーとしての心構えを身に付ける。「お客様からの要求を待つのではなく、一緒に解決策を作り上げるマインドを醸成する」と豊田シニアエクスペリエンスデザイナーは言う。

 特修には日立グループ企業から様々な職種の人材を集める。ITエンジニアだけではなく、コンサルタントや営業担当者、当然ながらデザイナーも含む。

 1回の特修で数十人が受講する。1年間の講座を終えた後も特修の卒業生同士で組織を超えた人的ネットワークを形成することを狙う。実際のデジタル化案件では、組織を超えて専門家が集まってチームを組織することが多いので、その人脈づくりに特修が役立つというわけだ。