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 プレチャンバー技術は近年、競技車のエンジンで採用が広がっている。ドイツ・ダイムラー(Daimler)やイタリア・フェラーリ(Ferrari)などがF1で先行して採用してきた。

 ホンダもF1のエンジンに搭載しているとされ、市販車への転用を図る。日本ではトヨタ自動車が「WEC(世界耐久選手権)」の競技車に採用する。

ダイムラーが2016年に公開したF1用ガソリンエンジンの外観。プレチャンバー技術を採用しているとされる。(出所:ダイムラー)
ダイムラーが2016年に公開したF1用ガソリンエンジンの外観。プレチャンバー技術を採用しているとされる。(出所:ダイムラー)
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 ホンダはプレチャンバー技術を利用した実験で、空燃比で40近くに達する超希薄な混合気を安定して燃焼できた。燃焼速度は、通常の火花点火機関に比べて2倍近く速められた。回転速度2000rpm、図示平均有効圧(IMEP)870kPaのとき、最高熱効率が47.2%に達した。

 排ガス性能も高められる。実験では窒素酸化物(NOx)の排出量を30ppmにとどめられた。超希薄な混合気を燃やすと、NOx排出量を抑えられることを確かめた形である。

 ホンダのプレチャンバー技術に対する期待は大きい。同技術を「i-CVCC」と名付けたことが証左である。マスキー法対策で1970年代に世界を驚かせた「CVCC(複合渦流調速燃焼)」の再来というわけだ。CVCCの根幹は、副燃焼室の活用である。

 ホンダが今回の実験で採用したプレチャンバー技術は、副燃焼室内に直噴インジェクターを配置するもの。アクティブ型と呼ばれる方式で、副燃焼室内の薄い混合気を確実に燃やせる。ドイツ・マーレ(Mahle)が開発する技術に似ている。

マーレが提案するアクティブ型のプレチャンバー技術。ホンダが実験している方式に似ている。副燃焼室内に直噴インジェクターと点火プラグを配置する。(出所:マーレ)
マーレが提案するアクティブ型のプレチャンバー技術。ホンダが実験している方式に似ている。副燃焼室内に直噴インジェクターと点火プラグを配置する。(出所:マーレ)
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 一方でホンダは、パッシブ型と呼ばれる、副燃焼室内にインジェクターを配置しないプレチャンバー技術の実験も進めている。こちらはドイツIAVやオーストリアAVLが提案する手法に似る。

 副燃焼室内への燃料供給は、気筒内に噴いた燃料が副燃焼室に設けた小さな穴を通って入り込む現象を利用する。アクティブ型に比べて、副燃焼室内のインジェクターを省いて安くできる。

 ただパッシブ型は希薄燃焼ではなく、理論空燃比の燃焼を想定する。高速燃焼を実現し、圧縮比を高めたときの異常燃焼(ノッキング)を抑えることが主な狙いだ。ホンダの実験では、通常の火花点火方式に比べて2倍近い高速燃焼を実現した。

AVLが提案するパッシブ型のプレチャンバー技術。「人とくるまのテクノロジー展2019」で展示した。IAVも同様の技術を手掛けている。(撮影:日経 xTECH)
AVLが提案するパッシブ型のプレチャンバー技術。「人とくるまのテクノロジー展2019」で展示した。IAVも同様の技術を手掛けている。(撮影:日経 xTECH)
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