「機構のコンセプトはずっと前からあった」(日産自動車の説明員)。だが、長いこと量産車向けには実現できずにいたのが、日産の可変圧縮比(Variable Compression、VC)ターボエンジン「VCターボ(VC-T)」だ(図1)。同社は、同エンジンをついに量産車向けとして世界で初めて実現、同社の高級車ブランド「インフィニティ」の新型SUV(多目的スポーツ車)「QX50」に搭載し、2018年に米国で発売した(図2)。その悲願の実現を陰で支えたものの1つが、ベンチャー企業である光コム(東京・千代田)の3次元形状測定技術だ。
「量産ラインでサブμmの精度(形状または寸法の精度とみられる)が出ていることを確認しなければならない」(同説明員)。同社は詳細を明かさないが、エンジンの圧縮比を8~14で可変にするリンク機構に使う部品には、そうした厳しい精度の確保が求められるものが2種類あるという。同エンジンの量産ラインでは「(そうした部品の)良品を99%造れる。残り1%(の不合格品)を市場に出さないために、全量を検査しなければならない」(同説明員)。そのため、その部品の精度の検査にも量産に見合ったタクトタイムで実施することが求められたという。
これを可能としたのが、冒頭で紹介した光コムの3次元形状測定技術である。基本的には、被測定物にレーザービームを照射して、その反射光から距離を求める技術(測距技術)だ。ガルバノミラーで左右(X方向)にレーザービームを振り、被測定物を前後(Y方向)に移動させることで、被測定物のXY平面の面形状を3次元的に測定できる(図3)。