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行動の分岐から適切なものを選択

 車両をどう動かすかを決めるためには、インタラクションによって生じる行動の分岐をそれぞれ評価し、その中から適切なものを選ばなければならない。しかし前述したように行動分岐の候補数は膨大になるため、全てを調べることは難しい。

 高性能な計算機を搭載すればリアルタイム性を保ったままで実行できるかもしれないが、消費電力などの制約があるため、それは現実的ではない。従って行動分岐の候補数を絞る工夫が必要になる。

 そこでROIPでは他車の行動予測結果を生かして各行動分岐の実現可能性を確率で測り、「起こり得ない」もしくは「起こる可能性が低い」パターンを削除していく。この処理は一般に「枝刈り」と呼ばれる。

 ROIPでは車両の運動ダイナミクスに関する知見も活用することで枝刈りの効率を上げ、最終的には数十から百未満に候補数を絞ることを可能としている。こうして残った各候補を安全性や乗り心地、燃費といった項目に基づいて評価し、“準最適”な目標軌道を1つ選択する(図5)。

図5 次の走路の候補を重畳表示
図5 次の走路の候補を重畳表示
車線変更が難しいと判断すると、走行車線の維持を選択する。(出所:デンソー)
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 図5は、枝刈り後の目標軌道候補を数個プロットし、前述の評価を行った結果を示したものである。この状況では右に車線変更する軌道候補が2本存在しているが、これらの軌道を選択した際に予想される将来の状態において、周辺車両との距離が近くなるため低い評価となっている。そのため最終的には左車線走行を維持する候補が選択されている。

 自動運転システムの一部として今は注目されていないが、この図のようにAIが答えを出すまでのプロセスを分かりやすく視覚化する技術も非常に重要である。開発の段階においては、デバッグやアルゴリズム改良の手掛かりとなる。また運用においては、ユーザーにAIの思考パターンを伝えることで、安心して使用できるようになるだろう。