米フェイスブック(Facebook)が仮想通貨(暗号資産)「Libra(リブラ)」の構想を2019年6月18日(米国時間)に発表してから、賛否が分かれる反応が世界を駆け巡っている。
否定的な意見の最たるものが、米連邦議会の有力議員がフェイスブックにLibraの開発中止を求めたことだ。各国で金融政策を担当する関係者から慎重な見方も出るなど、Libraには「逆風」が吹いている。Libraの実現性に疑問を投げかけ、準備不足を指摘する意見も一部に出てきた。
しかし、Libraのホワイトペーパーを読み込んだ仮想通貨の専門家の見方は逆だ。仮想通貨や関連技術の企業で構成する日本ブロックチェーン協会(JBA)は2019年06月24日、Libraを解説する会員企業向けのセミナーを開催した。Libraの技術解説で登壇した、ブロックチェーン技術の開発を手掛けるLayerX(東京・港)の福島良典社長は「フェイスブックはどう仮想通貨の規制をクリアするか、実によく研究してLibraを開発している」と指摘した。
ガバナンスを重視して顧客資産を保全
規制への対応を研究しただけではない。「規制当局と事前に相談しながら開発しているに違いない」というのが、福島社長の見立てだ。仮想通貨の事業者がたびたびトラブルを起こしてきた「顧客資産の保全」や「法令順守」、「資金洗浄対策」などに対し、フェイスブックは有効と考えられる解決策をしっかりと打ち出しているからだという。
米議会は早速、2019年7月にフェイスブックを公聴会に呼ぶことを決めた。個人情報を含め利用者をどう保護するのかなどの計画を子細にただすとみられ、Libra実現のハードルとなる可能性がある。しかし福島社長は、Libraは少なくとも仮想通貨の許認可を担当する米証券取引委員会(SEC)などの規制動向を踏まえており、「いくつかの国ではサービス導入の実現性が高い」とみる。
「規制をよく考慮している」と福島社長がLibraを評価するポイントの1つが、顧客資産の保全や法令順守を強化するためのガバナンスの仕組みだ。
前提として理解したいのがLibraの特徴である。Libraは円やドルといった法定通貨に連動した「ステーブルコイン」だ。そして特定の通貨ではなく、ドルやユーロなど複数の通貨で構成した「バスケット通貨」に連動する。
ステーブルコインは「Suica」など前払い式の電子マネーに近い性格を持つ。ルールも電子マネーに近い。日本では金融庁がステーブルコインは電子マネーと同じく、コインの発行額と同じ資産の裏付けが必要だというルールを定めている。
仮想通貨を認めている他国の規制当局もほぼ同様のルールを採用している。つまり10ドル相当のLibraを利用者に発行するには、利用者から10ドルを預かったうえで10ドルの資産を確実に保全する必要がある。