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 量子コンピューター向けのソフトウエアを開発するスタートアップの米QCウェア(QC Ware)が2020年第2四半期(4~6月)までに日本に進出することが分かった。同社は量子コンピューターの応用領域として新素材開発に力を入れており、製造業が強い日本が量子コンピューターの市場として有望だと判断した。

 同社のマット・ジョンソンCEO(最高経営責任者)が2019年6月24日に来日して、日本進出の計画を明らかにした。米シリコンバレーに拠点を置くACウェアは2014年の創業で、米金融大手のシティグループ(Citigroup)やゴールドマンサックス(Goldman Sachs)、欧州航空宇宙大手エアバス(Airbus)のベンチャーキャピタル部門であるエアバスベンチャーズ(Airbus Ventures)などが出資している。

米QCウェアのマット・ジョンソンCEO
米QCウェアのマット・ジョンソンCEO
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 QCウェアは現在、米航空宇宙局(NASA)や大手金融機関、航空大手など限られた顧客向けに、量子コンピューター向けソフトウエア開発に関するコンサルティングサービスを提供している。2019年第3四半期(7~9月)にはQCウェアにとって初となる製品を発売し、幅広く顧客を開拓する計画だ。そうした事業拡張の一環として日本に拠点を開設する。

 日本拠点のビジネス責任者には日本人を採用する予定で、それ以外にも「量子コンピューターのアルゴリズムに精通した研究者を採用したい」(ジョンソンCEO)という。なぜ日本に拠点を開くのか。その理由は大きく3つあるという。

 第1の理由は日本に有力な製造業が存在することだ。同社が量子コンピューターの応用領域として有望視するのは「量子化学シミュレーション」。新素材の開発などが容易になる可能性があり、実現すれば製造業へのインパクトが大きい。

数千個の原子の化学反応をシミュレーション

 QCウェアが強みとするのは同社の研究者が開発した量子化学シミュレーションのアルゴリズム「MC-VQE(Multistate Contracted Variational Quantum Eigensolver)」である。MC-VQEは「VQE」の改良版との位置付けだ。

 VQEとは、今後数年以内に登場する見込みの「NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer、ノイズがありスケールしない量子コンピューター)」と呼ぶ量子コンピューター向けの量子化学シミュレーションのアルゴリズムである。アラン・アスプル=グジック氏が開発した。

 「VQEでシミュレーションできるのは2~3個の原子から成る分子の化学反応だが、MC-VQEを使うと数千個の原子から成る分子の化学反応をシミュレーションできるようになる」。QCウェアで量子化学シミュレーションの研究開発を統括するロバート・パッリッシュ氏はそう主張する。

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