個人が記事や写真、動画などを発信し、販売できるコンテンツプラットフォーム「note」が存在感を増している。2014年に開始したnoteは2019年1月に月間利用者数(MAU)が1000万人を超えた。
2年前と比べて10倍、1年前と比べても3倍に伸びている。noteを運営するピースオブケイク(東京・港)によると、1日の記事投稿数は1万件を超えるという。
サービス利用者の急拡大に応えるため、同社はアクセス数に耐えるべく継続的にインフラを改善したり、ユーザーがより簡単に投稿・閲覧できるようにUI(ユーザーインターフェース)を改良したりしている。加えて、2019年3月に開始した企業向けサービス「note pro」のような新サービスの開発も手掛けている。
3年前まではエンジニア4人ほどで開発・運用していたが、サービス利用者の伸びとともにエンジニアを増やし、現在はエンジニア15人、デザイナー4人の体制まで拡大した。それでもエンジニアの「時間」は不足している。
「エンジニアを増やしてもサービス利用者の伸びはそれを上回っている。エンジニアを増やした分、コミュニケーションコストもかかるようになり、本来の開発・運用作業にかける時間が削られている」。同社の今雄一CTO(最高技術責任者)はこう話す。
デジタルトランスフォーメーション(DX)に注目が集まるなか、エンジニア採用のニーズが高まっている。そう簡単には増員できないのは同社に限った話ではない。今CTOは「徹底して生産性を上げるしかない」と腹を決め、2つの自動化で生産性向上に挑んでいる。
Slackと組み合わせる自動化ツール
ピースオブケイクは数年前から米スラック・テクノロジーズ(Slack Technologies)の業務用メッセージングサービス「Slack」を使うなどして、コミュニケーションコストを極力減らす努力を続けてきた。もう一段踏み込んで生産性を高める手段として白羽の矢を立てたのがクラウドサービスの連携ツール「Zapier(ザピアー)」だった。
Zapierを使うと、異なるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やWebサービスをユーザーがWebブラウザー上で自由に組み合わせることができる。例えば米グーグル(Google)のメールサービス「Gmail」で添付ファイルが付いたメールを受け取ったら、自動で添付ファイルを米ドロップボックス(Dropbox)のオンラインストレージサービス「Dropbox」に保存し、保存したことをSlackで通知する、といったアクションを自動化できる。
連携できるサービスは1500個以上という。米マイクロソフト(Microsoft)の「Office 365」や「Microsoft Teams」といったビジネス向けサービスだけでなく、TwitterやFacebookなどのSNSも連携可能だ。「プログラムを書かずに簡易なUIだけで設定できる手軽さががいい」と今CTOは評価する。
ピースオブケイクが全社導入したのは2019年4月からだ。もともとSlackを積極的に使っていたことから、トリガーとなるアクションをSlackで通知するという組み合わせで使うケースが多いという。