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 欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージを導入するITエンジニア(SAPエンジニア)が不足している。SAPジャパンは「今後、数年間のうちに数千人規模で不足する」と試算しており実際、SAP導入を手掛けるITベンダーも「人手不足で案件を断っている」「採用が難しい」などと相次ぎ証言している。

 こうしたSAPエンジニア不足の状況を打開しようとSAPジャパンが2019年7月4日に新たに打ち出した人材確保策が、フリーランスのITエンジニアの活用だ。パートナー企業がフリーランスのSAPエンジニアを探せる機能を持ったサービスをSAPジャパンが提供する。このサービスにより、最大1万人のSAPエンジニアを国内で確保できると見込む。

 現行の「SAP ERP」の標準サポートが切れる2025年に向け、既存ユーザーの多くは後継製品の「S/4HANA」への移行を迫られる。いわゆる「SAPの2025年問題」である。今回の施策は、従来の施策の延長だけでは案件増加の波を乗り切れないという同社の危機感の表れだ。

 フリーランスのエンジニアを探すサービスは、SAPの人材検索のクラウドサービス「SAP Fieldglass」を利用してSAPジャパンが構築した。フリーランスのITエンジニアを束ねる人材派遣サービスが持つ人材データベース(DB)とSAP Fieldglassを接続し、複数の人材会社の人材DBからSAPエンジニアを探せる機能を提供する。SAPエンジニアが不足するITベンダーは、このサービスを利用して自社に必要なフリーランスのSAPエンジニアを探せるようになる。

SAPが提供するフリーランスの検索サービスのイメージ
SAPが提供するフリーランスの検索サービスのイメージ
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「当社の試算では国内にフリーランスのITエンジニアは約10万人いて、そのうち1万人程度が対象になる見込み」とSAPジャパンの大我猛デジタルエコシステム統括本部長は話す。SAPが対象となると見込む1万人は、ユーザー企業の業務を分析できるといった上流工程のスキルを持つITエンジニアだ。

 同社はフリーランスのSAPコンサルタントの人数を、現時点で1500人程度とみている。これから1万人に対して教育などを実施し、2022年までに倍の3000人にする計画だ。副業として登録するITエンジニアも2000人程度いると想定し、2022年までにフリーランスで5000人のITエンジニアを確保する目標を掲げる。

 SAPジャパンは第1弾として、人材派遣サービスを提供するイントループやクラウドワークス、パソナJOB HUB、みらいワークスなど8社の人材DBと接続する。人材派遣サービス会社が、上流工程に強いITエンジニアに対してSAP製品の教育を提供し、SAPコンサルタントへの転身を促す。

ITベンダー、海外、学生とコンサル増員に注力

 SAPジャパンが今回、フリーランスのITエンジニアの確保に乗り出したのは、ITベンダーの多くにとってSAPコンサルタントの新規獲得が難しくなっているためだ。SAPジャパンは既にITベンダーに所属するITエンジニアのSAPコンサルタントへの転進支援や、海外ITエンジニアの確保などに乗り出している。