全2830文字
PR

無駄なアドオンの原因は製品知識の不足

 文書は過去のERP導入の課題・問題点の分析や国内外の導入事例の研究、そしてERP導入のポイントなどで構成する。導入のポイントをまとめた章では、ERP導入の目的、ERP導入プロジェクトの進め方、ERP導入の体制、ERP導入後の活用──という4つの項目に分けて、詳細を解説している。

ERP導入の羅針盤が指摘するポイント
ERP導入の羅針盤が指摘するポイント
[画像のクリックで拡大表示]

 目的では過去のERP導入プロジェクトについて「ERP導入自体が目的になっていた」と分析。次回のERP導入は「経営や業務を進化させるプロジェクトにすべきだ」と提言し、経営の高度化、グローバル化を改めて目指すとしている。

 導入プロジェクトの進め方では、前回のERP導入時の課題の1つとして製品への知識不足を挙げ、製品知識は優先度の高い検討事項であると説明している。製品知識の不足は無駄なアドオンソフトの開発につながるとの考えだ。

 導入の体制では「プロジェクトリーダーは次期経営幹部候補が務める」「モジュールごとではなく、業務プロセスごとにプロセスオーナーを設置する」といった提言をしている。その前提として、「常日ごろから経営レベルでのITリテラシーを上げ、ERP導入における経営の役割やガバナンスの重要性を、関係者に周知しておくべきだ」と強調する。

 最後は導入フェーズではなく、導入後のERPの活用フェーズについてポイントをまとめている。導入後もERPを活用し続けるポイントの1つとして「体制の維持」を挙げ、導入後も導入効果を出すために必要な体制を組むことを推奨している。ERP導入そのものが目的となっている場合、ERPの稼働後にプロジェクトチームを解散することが多く、その反省からだ。

40年間、同じ基幹系を利用し続けるのか

 今回、JSUGやSAPジャパンがERP導入の羅針盤を作成したのは、「デジタル化に向け基幹系を刷新する最後のチャンスだと考えたためだ」とJSUGの鈴鹿氏は強調する。その背景の1つが、いわゆる「SAPの2025年問題」だ。SAPは主力であるERP製品「SAP ERP」の標準サポート期限を「2025年まで」と定めている。SAP ERPのユーザー企業は次期版のS/4HANAへの移行など、何らかの形で基幹系システムの刷新が迫られている。

 もう1つの背景が「2025年の崖」問題だ。経済産業省が2018年9月に公表した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」で「DXを阻害する存在」として旧来型の基幹系システムを挙げ、DXを実現するために基幹系システムの刷新を迫っている。

 鈴鹿氏は、「ここで2000年当時の導入方法を踏まえてERPを導入したり、2000年当時の業務プロセスをベースにERPを導入したりすると日本企業はDXに乗り遅れる」と指摘する。

 日本企業の多くが基幹系システムを10年以上利用するのは当たり前な現状で、「2025年に2000年当時のまま基幹系を導入したら、下手をしたら2040年まで2000年当時の業務プロセスや業務のやり方を踏襲した基幹系システムを使い続けることになる」と鈴鹿氏は話す。

 ERP導入の羅針盤は、「DXと言われている現在、本当にそれでいいのか多くの企業に考えてもらいたくて作成した」(鈴鹿氏)。2025年に向けて基幹系刷新にどのように向かうのか。ERPのユーザー企業はDX時代を見据えた新たな取り組みが求められている。