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 米IBMの「Watson(ワトソン)」や富士通の「Zinrai(ジンライ)」などIT大手が争う企業向けAI(人工知能)市場に、新興ネット企業のLINEが挑戦する。強みは国内8000万人を超える利用者から日々集まる膨大なデータを基に開発したAI技術だ。虎の子のAI技術を外販し、顧客対応や事務処理自動化といったシステムの構築を支援する。消費者向けメッセンジャーアプリの市場を制したLINEが、新たな領域を開拓できるか。

eKYCやレシート撮影、スマホ世代のAI基盤に

 LINEは自然言語解析と音声解析、画像解析の3分野に関するAI技術を外販する。まず2019年7月にチャットボットとOCR(光学的文字認識)、音声認識によるテキスト書き起こしの3つの技術を順次発売した。顧客企業は自社のスマートフォンアプリにこれらの技術を組み込んでシステム開発に利用できる。

 同社はAI技術の外販を通じて、スマホを使った各種サービスの基盤としての地位を狙う。例えばチャットボットを使うと、LINEの公式アカウントなどを使った消費者向けのコンタクトセンターや社内向けの問い合わせ対応システムを開発できる。提供する対話の方式は3種類。よくある質問と回答をチャット形式で利用できる「FAQ」、決められた順序に沿って回答を絞り込んでいく「シナリオ」、必要な情報が埋まるまで対話を繰り返す「スロットフィリング」だ。LINE公式アカウントだけでなくビジネスチャットの「LINE WORKS」や「Facebook Messenger」なども窓口として使える。

LINE BRAINのチャットボット技術が提供する主な機能
LINE BRAINのチャットボット技術が提供する主な機能
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 OCR技術の想定用途の1つが、オンラインで本人確認する仕組み「eKYC(Know Your Customer)」。利用者はスマホのカメラで運転免許証と自分の写真を撮影するなど比較的簡素な作業で、本人確認手続きを済ませられる。金融やEC(電子商取引)、C to C(消費者間取引)といったサービスを提供するうえで重要な技術だ。

 LINEは自らもスマホ決済サービス「LINE Pay」にeKYCを導入済み。OCR技術を外販することで、同様な需要の高まりを取り込む。他にも家計簿アプリ向けのレシート撮影機能や、企業における領収書や請求書の電子化といった用途を見込む。

LINE BRAINのOCR技術が提供する主な機能
LINE BRAINのOCR技術が提供する主な機能
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