世界各地で5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが始まり、「5G元年」ともいわれる2019年。メーカー各社も続々と5G対応端末を発売している。今回、日経 xTECHは中国・華為技術(ファーウェイ)の5G対応スマートフォン「Mate 20 X(5G)」を分解した。分解には、DMM.make AKIBAの協力を得た。
Mate 20 X(5G)は、ファーウェイにとって初の5G対応端末である。本来なら、同社初の5G対応端末は折り畳み型の「Mate X」になるはずだった。しかし、当初2019年6月に予定されていたMate Xの発売は同年9月に延期となり、さらに遅れるという見方も出ている。その代わりに、Mate 20 X(5G)が“繰り上げ”で先陣を切った格好だ。
5Gモデムが見つからない…
注目は、自社設計の5Gモデム「Balong 5000」である。正確には、ファーウェイ傘下の半導体メーカー・海思半導体(ハイシリコン)が設計している。当然ながら、Balong 5000の採用も始めてとなる。ファーウェイは現在、米国政府による禁輸措置を受けており、特に米国企業からの部品調達に大きなリスクを抱えている。そこで同社は、禁輸措置の長期化を見据えて、主なハードウエアやソフトウエアの内製化を進めている。自社設計の5Gモデムは、その象徴ともいえる。ちなみに、Mate 20 X(5G)のアプリケーションプロセッサー「Kirin 980」もハイシリコンの設計である。
この5Gモデムの存在を確かめるべく、スマホ本体を分解してメイン基板上を探したが、それらしきものは見つからない。メイン基板で目立つのは、2個のDRAM(米マイクロンテクノロジー(Micron Technology)製および韓国サムスン電子製)と、1個のフラッシュメモリー(サムスン電子製)である。
そのうちマイクロンテクノロジー製DRAMは容量が8Gバイトと、スマホ本体の仕様と同じなので、他のファーウェイ製スマホと同様、この下にアプリケーションプロセッサーがPoP(パッケージ・オン・パッケージ)実装されている可能性が高い。だったら、もう一方のサムスン電子製DRAM(容量は3Gバイト)の下に5GモデムがPoP実装されているのではないか。そう推測し、これらのDRAMを基板から外すことにした。
PoP実装自体は、決して目新しい手法ではない。ファーウェイのスマホに限らず、他社の製品でもアプリケーションプロセッサーとDRAMをPoP実装していることが多い。PoP実装には、集積度向上やパッケージ間配線の短縮といった利点がある。