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 人間の視線方向の計測などを専門とするエモヴィス(本社東京)は鉄道総合技術研究所と共同で「車掌用体験学習型VR-HMD」を試作、「鉄道総研技術フォーラム2019」(2019年8月29・30日)に出展した。車掌の目に近い位置から駅のホームを360°カメラで動画を撮影し、適切な場面を抜き出して訓練用のコンテンツを作成する。米オキュラスVR製の安価なヘッドマウントディスプレーやスマートフォンで訓練ができ、コンテンツ制作も容易なため「現場の車掌自らが訓練や確認に使うような、小集団活用に向くと考える」(エモヴィス)としている。

図 「車掌用体験学習型VR-HMD」の展示
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図 「車掌用体験学習型VR-HMD」の展示
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図 「車掌用体験学習型VR-HMD」の展示
左が展示内容、右が画面表示の例。(写真:日経 xTECH)

 車掌が現実に勤務する線区の駅の風景に没入する感じを重視し、実写でコンテンツを構成する。車掌が首を振るとその方向の画像を見られる一方で、車掌が例えば左右に動いて視点が水平移動しても、画像は追従しない。画面解像度も、高品質なCGによるコンテンツなどと比べると精細ではない。それでも「駅ごとのホーム全体の見え方、階段やエレベーターといった要注意ポイントの様子などはよく分かる」(エモヴィス)。音声は360°マイクで収録しておき、訓練時には車掌の首の向きに追従して聞こえ方が変わる。「むしろ音声の聞こえる向きが没入度に大きく影響する」(同社)など、ゲームの場合に比べて没入感確保の優先項目が変わってくるという。

 現在はまだ開発中で、特許を出願している段階。車掌らによる小集団活動で、自らコンテンツを撮影する運用が望ましいとしている。「撮影業者はホームで撮影するのに許可が必要だし、白線や点字ブロックを越えた場所からの撮影は禁止されている。車掌が自ら撮影すれば白線を越えた位置からの画像は簡単に得られるし、場合によってはドアに挟まった演技などをしてもらうのも可能ではないか」(同社)。コンテンツを配信する形にすれば、複数人が同時に訓練に参加できるのも小集団活動向きと同社は見ている。