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 「新しいiPhoneにUWB(Ultra Wide Band、超広帯域無線通信)が搭載されるとの発表があってから、突然、何件も問い合わせが来た」――。こう語るのは、かつてUWBの応用開発に従事し、現在でも無線関係の仕事に就いている、ある大手電機メーカーの社員である。そんな彼に、「寝耳に水」とばかりに、社内からiPhoneのUWB搭載に関する問い合わせが相次いだ。

出所:Apple
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 UWBと言えば、高速通信が可能、あるいは高精度な屋内測位が可能といった特徴から、2000年代前半に脚光を浴びた無線技術である。当時はもっぱら1Gビット/秒の高速通信を実現する潜在力を秘めた技術として注目された。例えば、高いデータ伝送速度をうたう通信規格として、「Wireless USB」や「TransferJet(トランスファージェット)」などが登場した(関連記事注1)。ところが高速無線LANの高速化やキラーアプリケーションの不在などによって、普及には至らず、UWBは2010年代以降、表舞台でほとんど見かけなくなった。

注1)現在、60GHz帯のミリ波を用いるTransferJetの次世代仕様「TransferJet X」の開発が進んでいる。関連記事はこちら

 そんな「絶滅危惧種」とされていたUWBが、突如iPhoneに搭載されることで「不死鳥」のごとくよみがえりつつある。それだけに、iPhoneのUWB搭載は、冒頭の電機メーカーだけでなく、エレクトロニクス業界の多くの企業を驚かせた。一方で、かつてUWBを推進していた無線技術者などにとって、「これまでの低空飛行を脱する好機」(UWB技術に詳しいある技術者)でもある。

 かつて、「iPhone 4S」が2011年にBluetooth 4.0を採用し、Bluetoothの普及が一気に加速した。中でも、Bluetooth 4.0で規定された「Bluetooth Low Energy(BLE)」がエレクトロニクス業界などで浸透した契機と言われている(関連記事)。UWBも、iPhoneの採用でブレークの可能性が出てきたわけだ。