日本生命保険が営業職員の業務効率化へIT活用を急いでいる。スマートフォンを計4万台配布し、営業職員の顧客対応のスキル向上や業務効率化に役立てる。切り札は営業トークを自撮りして内容をAI(人工知能)で自動判定する機能だ。接客スキルを効率的に高めるほか、ロールプレイング(模擬商談)形式の研修につきまとう「恥ずかしさ」を軽減する効果も期待する。最先端のITを活用して、営業職員のスキルを最大限に引き出す狙いだ。
2020年1月から順次、営業職員向けに富士通製のスマートフォンを貸し出す。希望者が有料で使う仕組みで、導入台数は約4万台に達すると計画する。現在、営業職員は「フィーチャーフォン」と呼ばれる従来型の携帯電話を使っている。初期投資に約30億円、端末の保守などに年間20億円ほどがかかる見込みだ。
スマホの本格導入をきっかけに、営業職員のスキルや生産性を引き上げる仕掛けも盛り込む。具体的には、社内向け照会業務に富士通のAIチャットボットを採り入れたり、ビジネスチャットの「LINE WORKS」を活用して拠点内のコミュニケーションを円滑にしたりする。
例えば、AIチャットボットを活用することで、顧客との面談中に即答できない質問が出ても、その場で調べて答えられるようにする。営業職員が持ち帰って調べる手間を省く。回答候補の上位5件に適切なものが含まれる割合は9割以上に達するという。
表情などでスキル評価
スマホに搭載した新機能のなかで特に目を引くのが、AIが営業職員のスキルを評価する「ロープレAI」と呼ばれる機能だ。ロープレはロールプレイングの略で、営業担当者が商談などの状況を想定したやり取りを反復することで、接客やコミュニケーションのスキルを磨く研修方式だ。
日本生命は営業職員が顧客に提案している様子をスマホで自撮りすると、内容を自動的に評価する機能を盛り込んだ。AIが表情やジェスチャー、スピード、明瞭さなどをもとに評価する。単に評価するだけでなく、不十分な点も指摘してくれる。現在はPoC(概念実証)の段階で、2020年4月の本格導入を目指している。