米グーグル(Google)は2019年10月23日(米国時間)に米サンタバーバラで記者会見を開催し、「量子超越性」を実証した同社の量子コンピューターに関する今後の実用化計画などを明らかにした。今後10年で量子ビットのエラー訂正ができるようにして計算機としての有用性を高めるほか、エラー訂正ができない「NISQ」と呼ばれるハードウエアの有効な使い道を探る。
グーグルは同日に英「Nature」に掲載した論文で、54量子ビットを搭載する新量子プロセッサー「Sycamore(シカモア)」が既存のコンピューターでは到達し得ない能力を持つと示す量子超越性を実証したと発表している。
量子コンピューターの性能は「二重の指数関数的速度」で向上
Sycamoreは量子ビットの数が少なく、有用な量子計算を実現するためのエラー訂正ができない。そこで今後は、量子ビットのエラー訂正が可能な「万能(ユニバーサル)量子コンピューター」の開発を目指す。同日に米サンタバーバラで開催した記者会見でグーグルは、エラー訂正が可能な100万量子ビットを搭載する量子コンピューターの完成時期について「今後の10年」のことになると示した。
量子ビットや量子ゲートのエラー率を下げると共に、量子ビットの数を増やしていくことで万能量子コンピューターを目指す。グーグルは量子コンピューターの計算能力は今後「Double-exponential rate(二重の指数関数的速度)」で向上するとの見方を示している。
また同時に量子ビットの数が少なくエラー訂正ができない「NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer、ノイズがありスケールしない量子コンピューター)」の有用な使い道を探す取り組みも加速する。
量子コンピューターで乱数生成
量子コンピューターはエラー訂正ができないと有用なアプリケーションは実行できないとの見方が現在のところは優勢だ。しかしグーグルの量子人工知能研究所を率いるハルトムト・ネーヴェン(Hartmut Neven)氏は記者会見で、NISQのハードウエアに関してはまず「量子保証可能な乱数生成(Quantum Certifiable Random Number Generation)」と呼ぶ用途で、有用性が実証できそうだと明らかにした。