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 政府がIT予算を効率化する調達改革をに力を注いでいる。2020年度からの2本柱は「民間クラウドの活用」と「IT調達のガバナンス強化」だ。一言で言えば「IT予算の無駄遣いの撲滅」が狙いだ。

 前者の民間クラウドは一足早く取り組みが進んでいる。中央省庁が共同で使うIT基盤「政府共通プラットフォーム(PF)」の第2期整備計画で、米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services)のクラウドサービスを採用すると2019年5月に決まり、業界に衝撃を与えた。

 より太い柱が後者のガバナンス強化だ。各省庁がこれまで握っていたIT予算の一部を内閣官房に集約して、各省庁のIT調達プロジェクトに内閣官房のチームが参画する制度が始まる。調達のノウハウを内閣官房に集約してより強力な点検や助言を受けることで、行政システムの費用対効果を最大化する狙いだ。

 民間クラウドの活用やIT予算の一元化などは、2019年9月までIT担当相を務めた平井卓也衆議院議員が旗振りを担ってきた政策だ。平井議員はIT担当相着任時に日経コンピュータ誌の取材に対し、クラウド活用などの調達改革を推し進めれば、「政府のIT予算は現状から3割減らせる」と語っていた。

平井卓也衆議院議員
平井卓也衆議院議員
(写真:陶山勉)
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「需要と費用対効果を踏まえて検討すべきだった」

 こうした思いの下で成した「IT予算の無駄遣いを撲滅する」取り組みだが、図らずも成功に疑問符を投げかける不祥事が見つかった。18億円超を費やした総務省のセキュリティー対策が、全く使われずに廃止されたと会計検査院の検査で分かったのだ。

 「計画を作る前に実需を把握し、費用対効果を検討すべきだった」。会計検査院は2019年10月28日に公表した報告書でこう指摘し、総務省に対して再発を防ぐための是正改善を勧告した。

セキュアゾーンの検査結果を公表した会計検査院のWebサイト
セキュアゾーンの検査結果を公表した会計検査院のWebサイト
(出所:会計検査院)
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 指摘されたのは総務省がつくった、政府共通PFの中で特に高いセキュリティーを確保した専用区画「セキュアゾーン」である。特徴は、政府共通PF上で稼働する行政システムとその操作端末の両方を、インターネットと徹底的に隔離した点である。

 セキュアゾーン開発のきっかけは、2015年5月に発生し、最大125万件の個人情報が流出した日本年金機構へのサイバー攻撃事件だ。事態を重く見た政府は内閣官房の「サイバーセキュリティ対策推進会」で対策を議論した。

 同会議の議長は「行政システムで機微な情報を扱う部分とインターネットなどを分離する」などの対策を指示した。これを受け、政府共通PFを運用する総務省はセキュアゾーンを計画した。