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 富士ゼロックス(本社東京)と慶應義塾大学SFC研究所(神奈川県藤沢市)のソーシャルファブリケーションラボは、2016年に共同開発した3Dプリント用データ形式「FAV」(FAbricatable Voxel)が汎用3DデータフォーマットとしてJIS(規格番号:B9442、「3Dモデル用FAVフォーマットの仕様」)に制定されたと発表した(ニュースリリース)。3Dプリントに限らず、製造業のさまざまな部署間や工程間での3D情報の共有などに有効として、両者それぞれがさまざまな分野での普及拡大を図る。

 FAVは、立体物に関するさまざまな情報を保持した基本構成単位(ボクセル)を積み上げて立体物全体を表現する形式(関連記事)。3Dモデルの表面だけでなく、内部構造の色、材料、接合強度情報を全て保持できるのが特徴だ。3Dデータフロー上でデータ変換などの処理がいらないため、3Dデータの入力・作成から出力まで一貫したワークフローを実現する。

設計・製造工程の3Dデータを一元管理

 富士ゼロックスは今回、仕様を拡張し、設計・製造工程で発生するさまざまな3Dデータの一元管理を可能にした。例えば、CADで作成した形状データや製品の強度を示す構造解析データ、金型を造る際に利用する熱流動解析データ、製品が設計通りの寸法・形状でできているかを確認するための3D計測データといったフォーマットの異なる3DデータをFAV形式に変換すれば、データベースによる統合管理が容易になる(図1)。

図1:FAV形式による3Dデータの一元管理のイメージ
図1:FAV形式による3Dデータの一元管理のイメージ
(出所:富士ゼロックス、慶應技術大学)
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 ボクセルに材質、応力、流速、変位といったデータを属性値として持たせ、用途や工程に応じてデータを使い分けられる一方で、データの形式は同一であるため、統合して扱いやすい。同社はFAVベースの類似形状検索機能を用意しており、過去の類似データの参照も容易。例えば製造工程での問題発生や品質不良について過去の事例を引き出しやすくなり、未然防止などに役立てられると考えられる。

 工程ごとに分散していて他の工程からは見えなかった製造前のシミュレーション情報や製造装置の設定データ、製造後の測定結果などを共有・活用しやすくなるため、意思決定の迅速化と手戻り防止による生産性の向上も期待できる(図2)。大量のFAVデータをビッグデータとして用いて人工知能(AI)で分析することにより、言語化が難しかった技術者のノウハウをデータ分析結果として表現する、といった応用も見込める。

図2 工程別に異なったデータを持たせる
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図2 工程別に異なったデータを持たせる
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図2 工程別に異なったデータを持たせる
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図2 工程別に異なったデータを持たせる
左が構造解析の結果、中が樹脂流動解析での溶融樹脂の圧力、右が実測値と元のボクセルを比較したときの変位(誤差)。(出所:富士ゼロックス)

 ボクセルデータの処理では従来、データ量が膨大であることや、曲面・角などの特徴的な形状の再現性が低いことが課題とされてきた。同社はもともと、2次元の文書で「細かく見たいところや変化の大きいところは高い解像度で、そうでないところは少ないデータ量で表現するという、一種の圧縮技術を手掛けていた」(同社研究開発本部TDC研究主席の藤井雅彦氏)。このノウハウを3Dに拡張し、さまざまな大きさのボクセルを組み合わせて対象物を表現し、データ表現や処理の効率化を図っている。形状精度を保ちながら処理時間を1/100~1/1000に縮めたとする。用途や工程によってボクセルの解像度を変えたり、それぞれ別の場所を細かく表現したりできる仕組みも設けた。

 CADやシミュレーションツールからFAVへのデータ変換ツールは、既にいくつか用意した。今後、さらにどのツールに対応すればよいか、製造業のメーカーやPLM(製品ライフサイクル管理)ツールのベンダーなどの意見を聞き、順次開発したり、パートナーに開発を依頼したりして整備を進める。

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