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 携帯機器から自動車まで、これまでに総額2億円分程度の製品を分解しているというセミコンサルタント 代表の上田弘孝氏は、これまでのiPhoneをはじめとする各種スマートフォン(スマホ)の分解・分析結果や企業の発表情報などから、2020年後半に発売されるiPhoneは“5G対応”としてsub-6とミリ波帯に対応するとの予想を明かした。5Gモデムには米クアルコム(Qualcomm)の「SDX55」(Snapdragon X55)、アンテナには同「QTM252」を採用し、自社開発モデムの採用は2022年以降になるとみる。アンテナの設置場所の都合から背面のガラスパネルと金属製フレームによる側面で構成する「iPhone 4」に似たものとなり、極小額縁にカメラや各種センサーを収めるフチなし・ノッチなしデザインに大幅変更されると予想する。

講演するセミコンサルタント 代表の上田弘孝氏
講演するセミコンサルタント 代表の上田弘孝氏
上田氏はこれまでに総額約2億円分の製品を分解したという“分解マスター”(撮影:日経 xTECH)
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 上田氏は、SBRテクノロジー 代表取締役 西尾俊彦氏がモデレーターとなり2019年11月19日に東京都内で開催したセミナー「5Gインフラと半導体業界のビジネス拡大の可能性」(グローバルネット)の中で「実用化に向けた5Gスマートフォンの現状と実装技術の検証」と題して講演し、現状の5Gスマホの分析と今後の方向性の予想を紹介した。2019年9月までに発売された主な5Gスマホのうち、ミリ波(数十GHz帯)に対応するのは米モトローラ・モビリティ(Motorola Mobility)の5G対応向けの機能拡張デバイス「moto mods」シリーズの「moto 5G」と、韓国サムスン電子(Samsung Electronics)の「Galaxy S10 5G」「Galaxy Note 10 5G」「Galaxy Note 10+ 5G」にとどまる。それ以外は5Gのうち6GHz以下の「sub-6」のみに対応する。

 上田氏によれば、5G対応でスマホの内部は大きく変化するとみられる。例えば、moto 5Gでは、5G用アンテナの裏面に放熱用とみられるCu板が貼り付けられたり、人体との距離が近いときにミリ波を遮断するためとみられる近接センサーを各アンテナと一緒に配置したりするなど、新たな部品が追加された。また、sub-6であればMID(成形回路部品、Molded Interconnect Device)など従来と同様のアンテナで対応しているが、ミリ波ではアップコンバート/ダウンコンバート回路を持つアンテナモジュールを利用する方法が普及している。当初はクアルコムのアンテナインパッケージ(AiP)「QTM052」だけが唯一の解であり、モトローラやサムスン電子が採用した。moto 5Gでは4個のAiPが搭載されていたが、低コスト化のために2~3個に減らす可能性も高いとみる。

米モトローラ(Motorola)のスマートフォン「moto z3」などと組み合わせる「moto 5G」を分解したところ
米モトローラ(Motorola)のスマートフォン「moto z3」などと組み合わせる「moto 5G」を分解したところ
左から、前面カバー、Liイオン2次電池、シールド材、アンテナとメイン基板、金属製の背面パネル、背面カバー。メイン基板の左右上には、Cu板を貼り付けた5Gアンテナ(AiP)「QTM052」が確認できる(撮影:スタジオキャスパー)
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 アンテナとメイン基板間を結ぶケーブル部分も大きな変化がありそうだ。従来はケーブルとしてフレキシブル基板や細線同軸ケーブルを用いる場合が多かったが、5G対応端末ではフレキシブル基板として一般的なポリイミド(PI)では性能が不足するため、液晶ポリマー(LCP)や変性ポリイミド(Modified PI、MPI)、あるいはリジッド基板などが使われている。特にミリ波対応材料は業界的に定まっていない。ただし、低コスト化のためにアンテナからのケーブルは他のケーブル(フレキシブル基板)と一体化する形になるとみられるため、メインとなるフレキシブル基板材料が変わる可能性もある。

 米アップル(Apple)のiPhoneではUWB(Ultra Wide Band、超広帯域無線通信)搭載が5Gに向けた布石とみる。対応バンドが激増しているためにiPhone 4同様に金属製フレームをアンテナとして活用しても足りず、「iPhone 11 Pro」などが背面パネルにUWB用アンテナを設置したのと同様にミリ波用アンテナを背面パネルに配置するのではないかと、上田氏は予想する。「(5Gモデム)SDX55に(AiP)QTM252を組み合わせるという方法は2020年春にサムスン電子が採用する。その後を追って同年秋にiPhoneが出るというのは従来通りの流れ。それまでに発売されるiPad ProやiPhone SEにも、2020年版のiPhoneのアンテナ周りを占うヒントが出てくるだろう」(上田氏)。

UWBアンテナは背面パネルに配置
UWBアンテナは背面パネルに配置
日経 xTECH編集部での「iPhone 11 Pro Max」分解で、背面パネルに貼られたUWB用アンテナを外しているところ(撮影:加藤 康)
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