ダイキン工業は、空調機の保守点検などのサービス業務の支援に向けて、東京大学発のベンチャー企業と協業する(両社のプレスリリース)。音声処理関連の技術を手掛けるフェアリーデバイセズ(東京)の首掛け型ウエアラブル端末「THINKLET」や関連システム、ダイキン工業が開発した業務支援Webアプリケーションソフトウエアなどを活用する。ダイキン工業はこの仕組みにより、熟練者不足や属人化する業務ノウハウの消失、エンジニアの非コア業務の負荷といった課題解決を目指す。現場でのトライアルを半年ほど行い、販売店やサービス現場で順次導入を拡大する予定。ダイキン工業が導入するフェアリーデバイセズのウエアラブル端末の台数は世界で数万〜数十万台となる見込み。
製品開発やサービスの向上には「現場の声」が欠かせない。保守点検や修理に相当するサービス現場はその1つだ。作業内容や現場状況を記録して保存したり、機械学習などによりデータを解析したりする必要があるが、現場で機械学習などを想定したデータを作成するのは難しい。
今回の取り組みは、後で機械学習などを利用することを前提として音声入力を活用する点が特徴。THINKLETはローエンドからミドルエンドのスマートフォン向けアプリケーションプロセッサーを使った“Android端末”で、装着者や対面者の声に絞ったビームフォーミング*を実現するためにマイクを5個搭載する。騒音環境下の話し声は人間には聞き取ることができても、機械が必要な音声として認識するのは困難だ。今回の端末では実装するフェアリーデバイセズの音声処理人工知能(AI)「mimi XFE」により、後段の機械学習などに活用しやすい雑音を抑えた音声が取れるという。
* ビームフォーミング 音波や電波などの指向性を高める技術。
同端末は800万画素の超広角カメラを搭載しており、LTEまたはWi-Fiで常時クラウドに接続することが可能。映像と音声データをひもづけて記録できるので、指差し確認する際のように話しながら作業すれば、別途ラベル付けをしなくても作業内容などが付与された情報(アノテーション情報)を持つ作業データとして収集できる。
この他、ジェスチャーセンサーや、着脱検知用の近接センサー、GPS、スピーカー、イヤホン端子、Bluetoothなどを搭載する。端末自体にディスプレーはないが、USB Type-C端子を備えており、拡張現実(AR)グラスなどに画像を出力したり、別のセンサーと連携したりすることができる。