展示会「ET 2019(Embedded Technology 2019)」(2019年11月20~22日、パシフィコ横浜)で、大人用おむつに尿などを検知するセンサーを付けた2種類の「ワイヤレスおむつセンサー」が2つのグループから出展された。1つは、日本ケミコンと立命館大学、白十字、エイブリックが共同開発したもの。もう1つは、東京理科大学 理工学部 先端化学科 講師の四反田功氏の研究室、筑波大学、理化学研究所、タニタ、アイシン・コスモス研究所が共同開発したものである。
両グループはそれぞれ、利用者の尿などを検知しておむつの取り換え時を知るためのセンサーなどを大人用おむつに実装した。ただし、その動作の仕組みは大きく異なる。電源兼センサーは、日本ケミコンらがアルミ箔を用いた1次電池であるのに対し、東京理科大学などはバイオ燃料電池である。
尿が電解液として働く
日本ケミコンらのおむつセンサー用電池は、正極材料としてエッチドアルミ箔、負極材料として細長い活性炭シートを用いる。両電極はちょうど線路のように平行しておむつに実装されている。エッチドアルミ箔は、アルミ箔をエッチングして多数の微細な穴または凹凸を設けて長いリボン状にしたものである。
ここで利用者がおむつに尿をすると、ちょうどそれが電解液の役割を果たし、電池が発電を始める。この結果、電池自体が尿のセンサーになるというわけだ。
この電力は、まずキャパシターにためられる。それが一定量を超えると2V出力の昇圧回路を経て、エイブリックが開発したマイコン内蔵無線送信機に送られる(関連記事)。発電電力の電圧や電流値は明らかにしていない。「尿の量と発電量はおおよそ比例する」(日本ケミコン)ことから、発電量に基づいてマイコンがおむつの取り換え時期を推定。その時期が来ると無線送信機から、取り換えを促す通知が発信される。
課題は、エッチングのコストだという。「アルミ箔そのままでは発電出力が弱い。エッチングをするとコストが高くなってしまう」(日本ケミコン)。無線送信機は、1つを使いまわせるが、おむつ自体は、電池の仕組みも含めて使い捨てになる。おむつは1つ40~100円前後で販売されているため、エッチドアルミ箔のコストをどこまで低減できるかどうかが実用化を左右しそうだ。