PR
全2636文字

 日産自動車は、2020年に330億円を投じて栃木工場の生産ラインを刷新する。この投資決定が示すのは、日産が電動化戦略で現実路線を選んだことである。これまで傾注してきた電気自動車(EV)は急速には普及せず、当面はガソリン車やハイブリッド車(HEV)との共存が続くシナリオを描いた。

 栃木工場に導入するのは、日産が開発した次世代のくるま造りのコンセプト「ニッサンインテリジェントファクトリー」である。同社副社長で生産担当の坂本秀行氏によると、同コンセプトに基づく新たな生産技術を「6年間かけて開発してきた」という。電動車両や自動運転が普及していく中で、「部品の組み合わせが複雑になって生産工程の難易度が格段に増す」(坂本氏)ことへの対応策だという。

 「数え切れないくらい多い」(同氏)という同コンセプトを構成する生産技術の中で、最も重要なのが「パワートレイン一括搭載システム」である(図1)。ガソリン車やEV、HEVなど異なるパワートレーンの車両を1つのラインで生産できるようにした。同システムは、「世界中の全工場に展開していく」(同氏)計画だ。

図1 日産の「パワートレイン一括搭載システム」
図1 日産の「パワートレイン一括搭載システム」
パワートレーンの組み立てに必要な部品をパレットにセットし、ロボットが持ち上げて自動で組み付ける。(画像:日産自動車)
[画像のクリックで拡大表示]

EV専用工場を選んだVW

 専用か混流か――。日産が次世代の生産技術の開発に6年間もの時間を費やした背景には、パワートレーン戦略が定まっていなかったことがある。争点になったのがEVの扱いだ。

 大量に生産するのであれば、「EVの専用ラインを構築したほうがコストを抑えられる」(日産の生産技術者)。実際、EVを強力に推進するドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)は、数千億円を投じてドイツや中国、米国にEV専用工場を用意することを決めた(図2)。

図2 VWはツヴィッカウ工場をEV専用に
図2 VWはツヴィッカウ工場をEV専用に
長年エンジン車を生産してきたが、2018年からEV工場への転換を進めている。2019年11月に新型EV「ID.3」の量産を開始した。(画像:VW)
[画像のクリックで拡大表示]

 他社に先駆けて量産EV「リーフ」を投入してEVの普及を目指してきた日産だったが、専用工場を用意するほどEV市場が成長するまでには時間がかかると判断した。パワートレーンの電動化は「エンジン車から一足飛びにEVに行くのではなく、HEVを経て徐々に変化していく」(前出の生産技術者)。これが、リーフを10年近く販売してきた日産が出した答えである。

この記事は有料会員限定です

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

有料会員と登録会員の違い