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 日本企業の社員が国内にいながらにしてインターネットで海外企業と公的に効力のある電子契約を瞬時に結ぶ――。そんな未来に向けて総務省が有識者会議で検討してきた法制度化が事実上見送られた。ただ一方で法制度化のニーズが高まっている実態も浮き彫りとなり、今後の検討に期待する声が上がっている。

 総務省は2019年1月から、有識者やITベンダー関係者らで構成する「トラストサービス検討ワーキンググループ(WG)」を設置して議論を進めてきた。当初は紙への押印や対面のやりとりに代わって、電子的に利用者の本人確認をしたりデータの改ざんを防いだりできる「トラストサービス」の法制度化に向けて検討してきた。しかし、いずれのトラストサービスに関しても新たな立法や法改正は見送った格好だ。

トラストサービス検討ワーキンググループが検討したトラストサービスの概要
トラストサービス検討ワーキンググループが検討したトラストサービスの概要
(出所:総務省)
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 同WGが検討したトラストサービスのうち、電子文書などの作成時刻や改ざんされていないことを証明する「タイムスタンプ」は日本データ通信協会による認定制度が14年間運用されてきた。

 しかし国による信頼性の裏付けがないことや、国際的に通用するかどうかといった懸念が普及を妨げているといった指摘が出た。WGは総務省が新たに国による認定制度を作って信頼できる事業者を認定する仕組みを設けるべきだと提言した。

 またWGは、電子データを作成したのが誰かを確認できる個人の電子署名(個人名の電子証明書)と同じように、電子データを発行した企業などを確認できる「eシール」の仕組みについても検討した。いわば法人用の印鑑をデジタル技術で実現する仕組みだ。

 WGはまず国が信頼できるeシールのサービスを提供する事業者を認定する基準を作って、認定そのものは民間の団体に委ねるべきだと提言した。現行のタイムスタンプと同様の仕組みを整備することになる。

 さらにWGは「リモート署名」についても議論した。リモート署名は利用者がICカードを持ち歩かなくても、サービス提供事業者のサーバーに保管した署名鍵を使ってネット上で電子署名を付ける仕組みだ。リモート署名は端末を選ばずに電子署名を利用でき、ICカードは不要になるので利便性が高い。