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 マツダが苦しんでいる。ようやく投入した新型ガソリンエンジン「スカイアクティブX」は、目標性能に達しないと映る。新しい大型車用プラットフォーム(PF)の開発は、大きく遅れる。ロータリーエンジンの投入は、無期限延期。難しい技術への挑戦は応援したいが、実力が追いつかない。「身の丈」を見つめる時期だろう。

 「新型車の良さは、乗ると分かる」――。

 予定から約2カ月遅れて2019年12月5日に投入したXエンジン搭載の新型「マツダ3」。開発責任者の別府耕太氏が強調するのが、加速感や乗り心地といった「官能性能」だった。乗らなくても分かる「カタログ性能」で特徴を打ち出しにくいXエンジンの苦しい胸の内が透ける。

マツダ3
マツダ3
(日経 xTECH撮影)
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 実際に乗ると、確かに走りの実力は高い。このクラスの代表車種と言えるドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen)の「ゴルフ(Golf)」と十分に競える水準と感じた。

 ただし、価格が見合わない。X搭載車の販売価格は約320万円からとハイブリッド車(HEV)並みに高い。排気量2.0L自然吸気(NA)ガソリンエンジン搭載車に比べて、約70万円高だ。日本仕様のX搭載車は2.0L搭載車に比べて最高出力が14%、燃費性能(WLTCモード)が10%上がるが、価格差を納得させるほどの向上幅と思えない。

 しかも、2.0L搭載車はレギュラー燃料なのに、X搭載車は高価なハイオク燃料を前提とした数値である。

 X搭載車は現状で、価格はHEV並みに高く、燃費はHEVに劣り、パワーは2.0Lターボ車に劣る中途半端なエンジン車に映る。

欧州燃費規制は未達

 燃費性能を最大3割高める――。2018年に日経 xTECHが取材していたときに狙っていた“3割”の目標に達していれば、事情は違ったはずである。

新型ガソリンエンジン「スカイアクティブX」
新型ガソリンエンジン「スカイアクティブX」
(出所:マツダ)
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 Xエンジンは高価なスーパーチャージャーなどを搭載し、制御の難しい自着火方式の希薄燃焼(リーンバーン)を実現した。他社の自動車技術者がうなる難度の高い技術を多く盛り込んでHEV並みの燃費性能を狙ったが、1割向上にとどまり、3割に大きく届かなかった。マツダの技術者は「新型エンジンは発展途上で、まだ潜在能力を引き出しきれていない」と、うなだれる。

 日本仕様の場合、ハイオク燃料に加えてレギュラー燃料に対応したことで、欧州仕様で16.3に高めた圧縮比を15.0に下げたことも燃費性能が低い一因である。圧縮比を下げると、熱効率が低くなる。

 コストは、HEVに比べて大幅に安くなるはずだった。電圧24Vのモーター兼発電機やスーパーチャージャーは高そうだが、HEVのような大容量電池や大出力インバーターが必要ないからだ。

 加えて、リーンバーンのコストを高める原因だった窒素酸化物(NOx)の排出量を抑えたこともコスト削減に大きい。排ガス後処理装置は三元触媒とGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルター)の構成で、高価な尿素SCR(選択触媒還元)を使わない。空燃比で2以上と“超希薄(スーパーリーン)”な混合気を自着火で燃やす難しい技術開発に成功したことで、実現した。

 それでも結果的にコストは上がっていった。世界の自動車メーカーが誰も量産できていない自着火の安定制御に、かなり苦しんだようだ。普通は使わない筒内圧センサーなど高価な部品を追加し、信頼性を高めてある。「初めての技術を多く盛り込んだため、慎重を期した」(マツダ技術者)。

 現状で高価なX搭載車を選ぶのは「世界初のスーパーリーンバーン」の売り文句が響く、一部の消費者にとどまるだろう。

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