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 iPhoneへの有機EL(OLED)ディスプレー初採用に向けて、有機ELの工場投資が相次いだのが2016~2017年。それから3年がたち、今再び有機EL投資ブームにディスプレー製造装置業界が沸き立っている。現在開催中のディスプレー関連の展示会「第29回 液晶・有機EL・センサ技術展(ファインテックジャパン)」(2019年12月4~6日、幕張メッセ)での話題は、有機EL一色ともいうべき状況だ。

 展示会場の中に入ると、製造装置メーカーが新製品や新サービスを積極的に提案する姿が目に付く。例えば、会場入り口の近くにブースを構えるブイ・テクノロジー(Vテク)もその1つである。

1000ppi対応の有機EL蒸着用マスク、20年1月からサンプル出荷開始

 同社は今回、1000ppiという極めて高い解像度に対応する有機EL蒸着用マスクを初めて展示した(図1)。大きさは「G6ハーフ」と呼ばれる、第6世代基板(1500mm×1800mm前後)の約半分のサイズ(1500mm×900mm前後)である。2020年1月からサンプル出荷を開始し、有機ELパネルメーカーの評価を受ける計画だ。

図1 ブイ・テクノロジーの有機EL蒸着用のファインハイブリッドマスク
図1 ブイ・テクノロジーの有機EL蒸着用のファインハイブリッドマスク
サイズは「G6ハーフ」(日経 xTECHが撮影)
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 蒸着用マスクは、赤(R)、緑(G)、青(B)の有機EL材料をそれぞれ、パネルの画素の所定の場所に付ける際に、不要な場所には付かないようにふさぐためのものである。現在は、金属をエッチングして微小な穴をたくさん空けたものが使われている。「ファインメタルマスク(FMM)」と呼ばれる。

 これに対して、ブイ・テクノロジーの蒸着用マスクは樹脂と金属から成る。微小な穴をたくさん空けた樹脂の上に、メッキで金属を付ける。樹脂と金属の2つの材料を組み合わせることで、強度を維持しながら薄型・軽量を実現した。同社はこのマスクを「ファインハイブリッドマスク(FHM)」と呼んでいる(図2)。

図2 ファインハイブリッドマスクの構造
図2 ファインハイブリッドマスクの構造
(ブイ・テクノロジーの説明資料を日経 xTECHが撮影)
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 蒸着用マスクとしての特徴は、大きく3つある。第1は、高精細・高解像度の画素パターンの蒸着に向くこと。先述のように1000ppi相当の有機ELパネルの製造に対応できる。薄型の特徴が、ここで生きる。穴の空いたFHMの樹脂の厚さはFMMの金属に比べて格段に薄く、また穴の断面が垂直であるため、高精細・高解像度のパネル製造に対応しやすい。

 第2は、有機ELディスプレーの大型化に向けたキーテクノロジーの1つとして期待される「縦型蒸着」に適用できることである。縦型蒸着では、ガラス基板とマスクを立てた状態で蒸着する。縦型蒸着の実用化に当たっては、蒸着マスクの軽量化が求められている。

 第3は、パネルメーカーの工程を削減できることである。現在の金属製の蒸着用マスクは、帯状の形でパネルメーカーに供給される。パネルメーカーは帯状の蒸着用マスクの両端を引っ張りながら、金属フレームに溶接して固定する。1つのフレームに複数の帯状のマスクを溶接して、蒸着装置に組み込めるようにする。ミクロン単位で位置を微調整しながらマスクをフレームに組み付ける高度な作業が求められる。一方、ブイ・テクノロジーのFHMはG6ハーフなどの大面積で製造される“1枚もの”であるため、溶接などの一連の工程が不要になる。