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 「鉄道を利用する1日当たり1790万人という世界最大級のお客様が我々の財産だ。この膨大な顧客接点を駅設備やSuicaなどのインフラと結び付けていくことで、デジタル変革を推進していく」。

日本マイクロソフトのイベント「Microsoft Envision」に登壇したJR東日本の小県方樹副会長(左)と米マイクロソフトの沼本健コーポレート バイス プレジデント
日本マイクロソフトのイベント「Microsoft Envision」に登壇したJR東日本の小県方樹副会長(左)と米マイクロソフトの沼本健コーポレート バイス プレジデント
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 日本マイクロソフトが2019年12月5日に東京都内のホテルで開いた経営層向けのイベント「Microsoft Envision」。基調講演に登壇したJR東日本の小県方樹副会長はこう述べた。基調講演にはJR東日本の他、トヨタ自動車やソニーの幹部が登壇。マイクロソフトが日本を代表する企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援している様子をアピールした。

 JR東日本の小県副会長は多くの分野でマイクロソフトのクラウドサービスを利用していると説明した。2019年7月には約5万3000人の全社員を対象にOffice 365を導入。駅や列車運行、設備工事などの現場にいる社員にも例外なく導入し、ビジネスチャットツール「Teams」などを使って情報共有をしているという。

 「現場でもOffice 365の活用が始まっている。2019年10月の台風19号で当社は大きな被害を受けたが、被害状況などの共有に役立った。間もなく始まる渋谷駅の線路切り替え工事の段取りにもフル活用している」(小県副会長)。

トヨタは海外販売店でHoloLens 2を活用

 続いて登壇したトヨタ自動車の北明健一情報システム本部長は、シンガポールの販売店でクルマの整備にヘッドマウントディスプレー「Microsoft HoloLens(ホロレンズ) 2」を活用している事例を紹介した。

トヨタ自動車の販売店で整備作業の支援のためにヘッドマウントディスプレー「HoloLens 2」を使う様子
トヨタ自動車の販売店で整備作業の支援のためにヘッドマウントディスプレー「HoloLens 2」を使う様子
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 諸外国では「ウーバー(Uber)」や「グラブ(Grab)」といったライドシェアサービスが広く普及し、シンガポールでは同国に本社を置くグラブが強い。トヨタにとって、クルマの所有者だけでなく、販売店と消費者の接点が減っていくのが悩みの種だった。

 グラブがサービスに使うクルマも整備は不可欠だが、トヨタ系の販売店ではない独立系の整備場が使われていた。トヨタ側が「トヨタ系販売店で整備を請け負いたい」と申し出たところ、グラブから「トヨタ系は品質がいいが、時間がかかる。整備と洗車を30分以内で完了させてほしい」との要望があったという。

 トヨタはこれに応えるため、HoloLens 2を活用することにした。整備士がHoloLens 2を装着すると、クルマの部位に重なる形で整備手順などの情報が浮かび上がる。これを整備作業時や事前の研修に使う。

トヨタ自動車の北明健一情報システム本部長
トヨタ自動車の北明健一情報システム本部長
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 「シンガポールでは整備士の入れ替わりが激しく、日本のようにベテラン整備士が新人に張り付いて教育するのが難しい。HoloLens 2である程度手順をガイドしてくれるのはとても有効だった」(北明本部長)。最初は100台分から始まったグラブとの取引は今では900台に拡大した。