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 トヨタ自動車は2019年12月5日、多数のコネクテッドカーが生成する大量データを短時間で処理できるコンピューティング基盤技術をNTTグループと共同開発したと発表した。500万台相当のコネクテッドカーを同時に扱えるほか、道路上の障害物を車載カメラで捉えてから、他の車両に通知するまでの時間を約15秒に短縮した。

 トヨタはKDDIと資本関係にあるが、今回の技術開発では「データ処理技術や標準化活動などで強みを持つNTTグループと組んだ」(トヨタ コネクティッドカンパニー ITS・コネクティッド統括部 主査の村田賢一氏)。トヨタとNTTグループは自動車向けのエッジコンピューティング技術に関するコンソーシアム「Automotive Edge Computing Consortium(AECC)」でも協力している。両社はこれらの活動を通じて、開発した技術を国際標準に押し上げ、この分野の主導権を握りたい考えである。

トヨタの村田賢一氏
トヨタの村田賢一氏
(撮影:日経Automotive)
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 なお、両社は共同開発について2017年3月に発表済みである(リリース)。今回はその進捗状況を説明した。

 トヨタは2018年6月に発売した「クラウン」「カローラスポーツ」以降、車両への車載通信モジュール(DCM)の標準搭載を進めている。DCMを通じて、さまざまな車両データをクラウドに送信し、コネクテッドサービスを展開する。2020年までに日本・米国・中国で発売する乗用車にDCMを標準搭載する方針である。

クラウド側の基盤技術をNTTグループと共同開発
クラウド側の基盤技術をNTTグループと共同開発
(出所:トヨタ、NTTグループ)
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 コネクテッドカーの課題の一つが、大容量のデータをリアルタイムに処理できる基盤技術の開発である。コネクテッドカーが生成する車両1台当たりのデータ量は、「カーナビ向けのプローブデータが数百Mバイト/月、ECU(電子制御ユニット)の状態データが数Gバイト/月、高精度地図(HDマップ)生成用のカメラデータが数Gバイト/月、レーザースキャナー(LIDAR)のデータが数十Gバイト/月」(NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 第一製造事業部 第一開発統括部 部長の古賀篤氏)に上る。

NTTデータの古賀篤氏
NTTデータの古賀篤氏
(撮影:日経Automotive)
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 実際にはすべてのデータをクラウドに送信するわけではなく、車両側でデータを処理・選別するため、ここまで大容量にはならない可能性もある。とはいえ、データの総量は1台当たりのデータ量×コネクテッドカーの台数で決まり、今後台数が増えていくと、2025~2030年には「エクサ(E、10の18乗、100京)バイト級のデータを扱う可能性がある」(同氏)という。

エクサ(E)バイト級のデータ処理基盤が必要に
エクサ(E)バイト級のデータ処理基盤が必要に
(出所:トヨタ、NTTグループ)
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 また、クルマはライフサイクルが10年と長く、古い車両と新しい車両が混在するため、データの種類が増えやすいという課題もある。さらに車両が高速で移動するため、データの収集や処理、通知などを位置情報に応じてタイムリーに行う必要があるなど、技術的な難度が高い。

 トヨタとNTTグループは、ワーキンググループによる机上での技術検討に加え、2018年12月~2019年3月に実機を使った実証実験を行った。検証エリアの東京・お台場で複数のコネクテッドカーを実走行させ、主に4G LTEのモバイル通信網を介して東京・大手町の実験センターにデータを集めて処理した。また、シミュレーターを使って擬似的に500万台規模の車両データを発生させ、通信インフラや大手町の実験センターが耐えられるか検証した。

実証実験の概要
実証実験の概要
(出所:トヨタ、NTTグループ)
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 実験センターのコンピューティング環境は、多数のパソコンを並列に接続し、GPUも加えて構築したという。また、共同研究に関わる技術者として、両社からそれぞれ50人が参加しているという。