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 ソフトバンクと東京大学は2019年12月6日、AI(人工知能)の研究開発に特化した産学連携協定を発表した。

産学連携協定の発表に臨んだソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(左から2番目)と東京大学の五神真総長(左から3番目)ら関係者
産学連携協定の発表に臨んだソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(左から2番目)と東京大学の五神真総長(左から3番目)ら関係者
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 ソフトバンクが今後10年間で200億円を拠出し、東京大学所属の研究者や外部から招いた研究者ら約150人を集結させたAI専門の研究機関「Beyond AI研究所」を2020年春にも両者で設立する。成果はソフトバンクの事業に活用するほか、両者が参画するジョイントベンチャーを立ち上げて事業化するなど、すべて事業化を前提にした研究開発に取り組むことが特徴だ。

 「日本が後れを取った過去はひとまず置いて、いまは行動を起こすしかない。ネバー・トゥー・レイトだ(遅すぎることはない)」。親会社であるソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は発表会見後のトークセッションに登壇し、日本のAI研究が米国と中国から大きく引き離された現状を踏まえて、東京大学と産学連携協定を結ぶ狙いをこう語った。

 「残念ながら、日本には投資する会社がない」。かつて孫会長は、AIをテーマに10兆円を集めた「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」の投資先に日本のベンチャー企業がほとんどない理由を記者に問われ、こう答えたことがある。

 東京大学との産学連携は、海外中心で進んできたソフトバンクグループ全体のAI投資戦略が「微調整」に入った結果と見ることができそうだ。ベンチャー発掘よりさらに上流の大学での研究開発に参画することで、「投資する会社がないなら自らつくり出す」というベンチャー創出に関わる新しい試みだからだ。

 1社あたり数百億~数千億円規模を投資するSVFとは規模の大きな隔たりがあるとはいえ、ソフトバンクグループのAI投資が日本に一部回帰する契機となるかもしれない。

事業化益は再びAI研究に再投資

 東京大学はこの3~4年、従来は研究室レベルにとどまった産学連携を組織全体に広げて包括的に協業関係を結ぶ取り組みを進めてきた。ソフトバンクとの協定は、ダイキンと2018年に結んだ包括連携協定で拠出される10年100億円を上回る過去最大の協定だ。日本の学術機関全体で見ても、京都大学のiPS細胞研究所(CiRA)が武田薬品工業と結んだ10年間200億円と肩を並べる、国内最大の産学連携プロジェクトとなる。

研究成果はジョイントベンチャーなどで事業化し、収益を研究開発に再投資する
研究成果はジョイントベンチャーなどで事業化し、収益を研究開発に再投資する
出所:ソフトバンク
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