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 トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)と英アーム(Arm)は、自動運転技術のコンソーシアム「AVCC(Autonomous Vehicle Computing Consortium)」の狙いについて、2019年12月6日に開催したアーム主催のイベント「Arm Tech Symposia 2019」で説明した。

 AVCCは自動運転車向けの車載コンピューターの推奨要件を定義するオープンなコンソーシアムだ(関連記事)。参画企業はアーム、ドイツ・ボッシュ(Bosch)、同コンチネンタル(Continental)、デンソー、米ゼネラル・モーターズ(GM)、米エヌビディア(NVIDIA)、オランダNXPセミコンダクターズ(NXP Semiconductors)、ルネサスエレクトロニクス、トヨタ自動車、スウェーデン・ヴィオニア(Veoneer)の10社である。2019年10月の発表時に比べて、「ルネサスとヴィオニアの2社が新たに加わった」(TRI-ADバイス・プレジデントの谷口覚氏)。

TRI-ADバイス・プレジデントの谷口覚氏
TRI-ADバイス・プレジデントの谷口覚氏
(撮影:日経Automotive)
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AVCCの参画企業
AVCCの参画企業
(出所:AVCC)
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 ドイツの自動車メーカーや米インテル(Intel)/イスラエル・モービルアイ(Mobileye)などが加わっていない点が気になるが、「関連する企業には幅広く接触しており、特定の企業を排除するものではない」(アームDirectorの新井相俊氏)という。なお、AVCCの初代チェアマンにはGMの担当者が就任している。

アームDirectorの新井相俊氏
アームDirectorの新井相俊氏
(撮影:日経Automotive)
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 AVCCは自動運転技術の非競争領域に焦点を当てたコンソーシアムであり、通常は競合関係にある企業が互いに協力し合う。現在も参加企業を募集中だが、「参加する場合には“技術的な貢献”が必要になる」(新井氏)という。情報収集のための参加などは基本的に認められないようだ。すべてのワーキンググループに技術者を派遣し、貢献することが求められる。競合関係を超えて優秀な技術者が集結するため、「自動運転技術の課題解決に非常に有効」(TRI-ADの谷口氏)とする。

 自動運転システムの最大の課題は、コストが高いことである。「地域によって変わる法規や、多様なモビリティーが混在する交通環境、時間や天候によって変化する道路状況などにすべて対応するためには、複雑なソフトウエアが必要になる」(谷口氏)。それを処理する車載コンピューターや半導体チップには高い性能が求められる。しかし、性能と同時に消費電力も増えてしまうと、放熱/冷却システムのコストがかさむ。「安価な空冷システムだけで間に合わせるためには、車載コンピューターの消費電力は30Wが限界」(同氏)とする。

30Wが限界
30Wが限界
(出所:TRI-AD)
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 性能が高く、消費電力の低い車載コンピューターの実現には、優れたプロセッサーやSoC(System on Chip)の開発が欠かせない。しかし、半導体メーカーがバラバラに開発を進めると、効率が悪くコストが高くなってしまう。そこでAVCCでは、自動運転車向けの現実的な車載コンピューターの要件を定義し、ムダを省く。

 具体的には、「プロセッサーやアクセラレーター、アプリケーションスペシフィックエンジンといったハードウエア構成や、ソフトウエアのAPI(Application Programming Interface)を定義する」(同氏)。その際に「部品レベルではなく、システムレベルで議論することが重要」(同氏)となるため、半導体メーカーだけでなく、メガサプライヤー(ティア1)や自動車メーカーが参画している。

 トヨタは自動運転の開発について、2つのアプローチを採っている。1つは自家用車向けに自動運転のレベルを段階的に引き上げていくアプローチ、もう1つはMaaS(Mobility as a Serivice)車両向けに特定の条件下で一気に完全無人化を図るアプローチである。AVCCでは、「この両方を対象としている」(アームの新井氏)。

自動運転の開発アプローチは2つ
自動運転の開発アプローチは2つ
(出所:TRI-AD)
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 また、トヨタに限らず、多くの自動車メーカーはすでにACC(アダプティブクルーズコントロール)や自動駐車といった設計資産を保有しており、これらを次世代の自動運転システムに統合していく方向である。このため、AVCCで議論する車載コンピューターには、「過去の設計資産を生かせるポータビリティーやインターオペラビリティー、スケーラビリティー、フレキシビリティーが重要」(TRI-ADの谷口氏)とする。