全2532文字

 速度超過をクルマ側で防ぐ――。欧州が世界に先駆けて動き出している。2019年3月下旬、欧州連合(EU)は、2022年5月からEU域内で販売される全ての新型車に、2024年5月から同既存車にインテリジェント・スピード・アシスタンス(Intelligent Speed Assistance、ISA)と呼ばれる装置の搭載を義務付けることで合意した。

 このISAとは、EUの定義では「運転者が道路環境に応じて適切な速度を維持できるように、適切かつ特化されたフィードバックを提供することで支援するシステム」である。欧州議会メンバーのローザ・トゥーン(Roza Thun)氏によると、地図情報や道路標識の認識に基づいて、速度超過がある場合に運転者にそれをフィードバックする装置であり、「運転者に確実に注意を喚起する知的システムであって、速度制限装置ではない」とする。

 だが、その先に見据えているのは、もう1つのISAである「インテリジェント・スピード・アダプテーション(Intelligent Speed Adaptation)」とみられる。

 スウェーデン・ボルボ(Volvo)のセーフティー・センターでディレクターを務めるヤン・イヴァーソン(Jan Ivarsson)氏は、2019年11月に来日した際、次のように明かしている(図1)。「欧州では、(場所に応じて法定速度を超えないように車速を制御する)インテリジェント・スピード・アダプテーションを適用する特別な道路を2022年までに設定しようという動きが出ている」。同氏によれば、例えば、学校や病院の周辺には、他の場所に比べて、クルマが自身の方に向かってきたときにうまく回避行動を取れない人が多い。そうした特別な道路を設定し、クルマ側で法定速度を超えるような車速を出せないようにしようという考え方だ。

図1 Volvoのセーフティー・センターでディレクターを務めるJan Ivarsson氏
図1 Volvoのセーフティー・センターでディレクターを務めるJan Ivarsson氏
(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 速度超過を問題視しているのは、EUだけではない。同氏は「ドイツの連邦政府もスピードの出し過ぎを大きな問題であると認識している。スウェーデンや他の欧州諸国、米国も同じ」とする。例えば、フランスでは、地方の中央分離帯の無い道路で制限速度を90km/hから80km/hに引き下げている。ドイツでは、「(速度無制限のアウトバーンに対して)長いこと速度を規制した方がいいのではないかという対話が続いている。速度が規制されるのではないかとみている」と同氏は見解を明かす。

 こうした傾向が強まっているのは、第1に、速度超過が大事故を引き起こす危険性を高めるからだ。「郊外ではかなりの車速を出してしまうケースがあり、衝撃エネルギーの増大によって大事故につながりやすい。一方、都市部では、クルマの数が多い上、歩行者や自転車に乗った人などぶつかる対象が多様である。たとえ車速の出し過ぎの度合いが少なかったとしても、影響は大きい」と同氏は指摘する。

 第2の要因は、環境負荷である。速度超過は、燃料消費を増大させ、環境負荷を大きくする。

 速度超過をクルマ側で防ぐ取り組みは、EVの普及を後押しするという見方もある。EVの弱点の1つが、高速走行したときの電池の減りの速さである。速度超過の防止は、総じて車速の低下につながり、そうした弱点を軽減する方向に働く。

この記事は有料会員限定です

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

有料会員と登録会員の違い