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直接接合するから溶接レスに

 超音波複合振動接合の最大の利点は、金属同士を直接接合することにある。溶接とは違って金属を溶かさないため、スパッタ(飛散物)の発生を抑えられる。リチウムイオン2次電池の量産工程は異物混入を極度に嫌う。製造工程で発生した微細金属粒子が電池セル内部で短絡を起こし、過剰発熱や発火を引き起こす危険性があることはよく知られている。

超音波複合振動接合の用途例
超音波複合振動接合の用途例
電機・電子部品の導通部で、接合面の直径が20~30mm程度の小さなものを得意とする。(出所:LINK-US)
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 こうした安全性に加えて、スパッタを低減することで歩留まりが大幅に向上することも、リチウムイオン2次電池の量産工程の接合技術に従来の溶接を置き換えて超音波複合振動接合が選ばれた理由だ。なお、接合に要する時間は最大でも1秒と、レーザー溶接や抵抗溶接とスピードは変わらない。接合強度は母材強度相当だという。

 電池分野に限らず、電子機器分野では「溶接をやめたいという声が多い」とLINK-US社長の光行潤氏は語る。溶接では上記のスパッタの発生に加えて、熱による組織変化や合金の生成により特性(機械的特性や電気的特性)が変化する。さらに、気泡(ブローホール)による接合強度の経年劣化(低下)の心配があるからだ。

車載機器の“アキレス腱”をなくせるか

 実は、この溶接レスよりももっと大きな野望をLINK-USは抱いている。それは「はんだレス」の実現だ。言うまでもなく、電子機器の分野では、はんだがなければ成り立たない。電子部品を実装することも、電子回路を構成することもできない。製品をまともに造れなくなるのだ。

 ところが、はんだは電子機器にとって必要不可欠であると共に、“アキレス腱(けん)”でもある。デンソーの技術者である神谷有弘氏は「車載電子機器の品質を決定するのは接続部であると言っても過言ではない」と語る。中でも、回路基板と電子部品の接続部であるはんだ付けが、品質不具合の温床にもなり得るというのだ。はんだもまた、溶接と同じく「できれば使いたくない」代物なのである。しかし、やめようにも他に選択肢がないと諦めざるを得ないのが現実だ。

 エレクトロニクス技術者のこの諦めに、LINK-USはこの超音波複合振動接合で切り込もうとしている。現にリチウムイオン2次電池で実現した溶接の置き換えの次に照準を合わせているのが、車載機器におけるはんだの置き換えだ。

 はんだレスが進めば、品質不具合の大きな芽を摘めるため、市場トラブルやリコールを減らせる可能性が出てくる。導通部の接合の「あるべき姿」を描けば、直接接合になるだろう。そこから見れば、はんだは「ムダ」に映るはずだ。ムダの徹底排除が体に染みついている自動車業界にとっては朗報かもしれない。