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 AI(人工知能)分野の有力な国際学会である「NeurIPS」が2019年12月8日から1週間にわたりカナダで開催された。9185件の投稿論文のうち、約15%の1428件のみが採択される狭き門だ。全体の約1割を米グーグル(Google)とその傘下企業が占める一方で、日本の企業や団体の存在感も着実に上がっている。

 NeurIPSはカナダ・バンクーバーのダウンタウンにあるバンクーバーコンベンションセンターで開催された。初日は展示、2日目から論文の発表や招待講演、6日目、7日目は分野ごとのワークショップやコンペティションが繰り広げられた。

NeurIPS 2019の会場となったバンクーバーコンベンションセンター(カナダ・ブリティッシュコロンビア州)
NeurIPS 2019の会場となったバンクーバーコンベンションセンター(カナダ・ブリティッシュコロンビア州)
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 今年で33回目となるNeurIPSは「Neural Information Processing Systems」の頭文字を取ったもので、脳の神経回路を情報処理で実現することを目的とした学会である。2017年まではNIPSと略していたが、2018年から「神経」をより強調した略称に改名した。

 NeurIPSはAIブームの追い風もあり参加者が急増しており、2018年は参加チケットの売り始めから、たったの12分で売り切れる事態となった。そこで2019年は抽選制を採用したところ1万5000人以上が応募し、2018年に比べて5割多い約1万3000人が参加した。2010年に比べて10倍の規模になっている。

 規模の拡大に伴って女性エンジニアによる「Women in Machine Learning」やアフリカ系コミュニティによる「Black in AI」などのセッションや展示を繰り広げるなど、ダイバーシティやインクルージョンに向けた取り組みがあったのも今年の特徴だ。NeurIPSへの参加が初めてといった参加者に、論文のポイントなどを指南するセッションもあった。

AIではGAFAでなくGMFI?

 NeurIPSで論文が採択されると「機械学習やディープラーニング(深層学習)の世界で一目置かれる存在になる」(日本のAI研究者)という位置づけにある。コンピューターがデータの中からパターンを見つけ出す機械学習のアルゴリズムや、多層に重ねたニューラルネットワークを使用する深層学習の仕組みやアプリケーション、それらの効率を飛躍的に向上させる技術などが発表の中心である。

NeurIPS 2019で採択された論文の分野。合計1428件
NeurIPS 2019で採択された論文の分野。合計1428件
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 圧倒的な存在感を示していたのがグーグルだ。社内の研究チームであるGoogle AIやGoogle Brainのほか、「AlphaGo」を開発したことで有名な傘下の英ディープマインド(DeepMind)なども含めて170本の論文が採択され、全体の実に1割超をグーグルグループが占めた。企業として2位となった米マイクロソフト(Microsoft)の76本を大きく引き離して圧倒的な1位である。

 GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)はAIの研究開発に力を入れているが、NeurIPSの採択論文数からはグーグル、マイクロソフト、米フェイスブック(Facebook)、米IBMの「GMFI」がこの分野の4強であることが分かる。

NeurIPS 2019で採択された論文の所属機関ごとの集計。本体やその関連機関を合算している。世界は主な企業、日本は上位の企業と機関を掲載した。ペルーのSan Agustin国立大学のディエゴ・チャレス氏が論文情報をクロールして集計したデータセットを再集計した
NeurIPS 2019で採択された論文の所属機関ごとの集計。本体やその関連機関を合算している。世界は主な企業、日本は上位の企業と機関を掲載した。ペルーのSan Agustin国立大学のディエゴ・チャレス氏が論文情報をクロールして集計したデータセットを再集計した
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理研が存在感、NTTやトヨタも

 日本勢の存在感も増している。理化学研究所が米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)に迫る21本を通している。理研のAIに特化した研究機関である革新知能統合研究センター(AIP)が寄与した。