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 「50kgの荷物を背負って時速13.5kmの速さで走れます」。こう言って、防衛装備庁 先進技術推進センターが紹介したのは、主に陸上自衛隊向けに開発している「高機動パワードスーツ」だ。装着者にかかる荷重をパワーアシストで補助して、重い物を背負った状態でも機動力を失わないように設計した。

パワードスーツを装着してトレッドミル(ランニングマシン)で走る防衛技官
パワードスーツを装着してトレッドミル(ランニングマシン)で走る防衛技官
取材時には、30kgの重りを背負って時速10kmで走っていた。(撮影:加藤康)
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 今回のパワードスーツの用途には、災害派遣や島しょ奪回などを挙げる。重い装備品を背負ったままでも素早く活動できるようにするのが狙いである。2014年の御嶽山の災害を受けて、人間しか入れない場所での救助活動のサポートする能力を重要視して開発を進めている。

 試作機のパワードスーツが2018年に完成し、現在は屋内の実験室や野外の演習場で性能評価を実施中である。例えば、装着者の歩きやすさなどの定性評価と、センサーの応答性や制御システムのオンオフ切り替えの正確性などの定量評価を実施しながら、課題点を洗い出す段階だ。

 装着時の走行速度の目安となる時速13.5kmは、一般に兵士が走る際の速度だという。「足の先まで外骨格のある製品で、このように走れるものはこのパワードスーツが世界初」(防衛装備庁 先進技術推進センター 研究管理官(第1技術領域担当)付 協調ロボットシステム技術推進室長 認識拡張技術推進室長の南亜樹氏)とする。

防衛装備庁 先進技術推進センター 研究管理官(第1技術領域担当)付 協調ロボットシステム技術推進室長 認識拡張技術推進室長の南亜樹氏。(撮影:加藤康)
防衛装備庁 先進技術推進センター 研究管理官(第1技術領域担当)付 協調ロボットシステム技術推進室長 認識拡張技術推進室長の南亜樹氏。(撮影:加藤康)
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 パワードスーツの重さは約25kgである。アルミ素材のフレームの重さが約9kgあるほか、1つ当たり約1kgのリチウムイオン電池を4つ搭載する。50kgを背負った状態で、約2時間連続稼働できる。腰の左右と両膝の外側には大型のモーターが1つずつ、計4つあり、足首の関節部分は板バネ機構で補助力を生み出す。装着者が走れるよう足先にいくほどパワードスーツの重さが軽くなるように設計した。

パワードスーツで使用する電池の1つ
パワードスーツで使用する電池の1つ
(撮影:加藤康)
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 個別のモーターの詳細は明かされなかったが、モーターの出力は合計で約55kg重の補助力を発揮するという。パワードスーツの重さ25kg分に加えて、30kg分の重さを補助する。例えば50kgの荷物を背負ったら、装着者が感じる重さは20kgとなる計算である。

 パワードスーツは靴まで一体化していて、足の外側に沿っている外骨格のフレームが足の裏まで続いているため、パワードスーツの重さが25kgあったとしても、体感では数値ほど重くは感じないという。荷物の重量もパワードスーツを通じて地面に逃がされるため「勝手に重りを背中に載せられても気付かない場合もある」(パワードスーツを装着した防衛装備庁の防衛技官)。

腰と膝にあるモーター(写真左)と、足首部分の板バネと一体化している靴(写真右)
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腰と膝にあるモーター(写真左)と、足首部分の板バネと一体化している靴(写真右)
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腰と膝にあるモーター(写真左)と、足首部分の板バネと一体化している靴(写真右)
(撮影:加藤康)

(出所:防衛装備庁の公式YouTubeチャンネル)

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