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 経費精算につきものの紙の領収書や請求書から、企業がついに解放される制度が整う。財務省はキャッシュレス決済などの決済データを税務に使いやすくする制度改正を実施する方針を固めた。2020年10月から導入する予定だ。

 実現すれば紙の領収書はもちろん、電子メールやWebサイトなどで紙を模した「電子領収書」を発行してもらう手続きが不要になる。企業には大きな投資も不要だ。

 ただし新制度の活用には2つの要件を満たす必要がある。1つは支払いを証明するデータが電子的に発行されること。クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済や銀行振り込みによる支払いがこれに当たる。

 もう1つはこれら決済データをシステム連携で取り込める機能を備えた、民間の会計や経費精算のクラウドサービスを使うことだ。

クラウドなら決済データは「信頼できる」

 決済データを税務に活用しやすくする制度改正は、与党が2019年12月12日に公表した2020年度の税制改正大綱で盛り込まれた。これを受け、財務省は2020年3月末にも領収書や請求書などの電子保存方法を定めた「電子帳簿保存法」の施行規則を改正する方針だ。

 決済データを領収書などに代わって支払いの証明に使うことは、実は現行制度でも可能だ。ただし企業が活用するにはシステム投資や体制整備の負担が重かった。

現行制度で決済データを活用して領収書類を不要にできる要件
現行制度で決済データを活用して領収書類を不要にできる要件
(出所:財務省)
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 まず支払いを証明するデータを受領したら、直ちにタイムスタンプを付与するシステムを導入しなければならない。タイムスタンプは電子証明書を用いてデータの最終更新日を証明できなければならず、専用のサーバーの設置が必要だ。

 第2の方法としては、受領した決済データの改ざんを防止する事務処理規定を作成して社内で運用する必要がある。改ざん防止の内部統制を整備するための事務負担やシステム投資が不可欠であり、特に中小企業には負担が重かった。

 このため、今回の制度改正では普及し始めたキャッシュレス決済とクラウドサービスを活用し、中小企業でも導入しやすいようにした。

 最大のポイントは「決済データをユーザー側で改ざんできないことが担保されているかどうか」(財務省主税局税制第一課)。会計や経費精算のクラウドサービスは決済事業者とAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じて決済データを取り込んでいれば、企業側でデータを改ざんできないと考えられる。そこでクラウドサービスを通じた決済データは支払いの証明に使えると判断した。

 今回の制度改正ではもう1つの方法も用意した。発行者側が支払いデータのタイムスタンプを付与する方法だ。物品の納入事業者などが納品データなどにタイムスタンプを付与する場合がこれに該当する。ただし、発行者側でタイムスタンプ用のサーバーを設置する必要が生じるため、主流はクラウドサービスの活用となりそうだ。

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