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 公正取引委員会は「デジタル・プラットフォーム事業者」と呼ばれる巨大IT企業に対し、独占禁止法における「優越的地位の乱用」の規定を企業だけでなく消費者との取引にも適用するためのガイドラインを公表した。米グーグル(Google)など「GAFA」と呼ばれる海外の巨大IT企業に加え、国内プラットフォーム事業者も規制の対象となり、違反すれば課徴金などの対象になる。デジタル社会のさらなる発展に備え、日本でも法制度の刷新が本格化する。

 プラットフォーム事業者は消費者にサービスを提供する際に、消費者の個人情報などを利用している。公正取引委員会がパブリックコメント(意見募集)を経て2019年12月に公表した「独占禁止法上の考え方」と題したガイドラインは、消費者が提供する個人情報の取り扱い方について「優越的地位の乱用」に当たる場合があると初めて規定した。

 ガイドラインが「プラットフォーム事業者が消費者に対して優越的地位にある」と位置づけるのは、一般的な消費者にとってプラットフォーム事業者が提供するサービスの機能・内容、品質など代替可能なサービスを提供する別の事業者がなかったり、プラットフォーム事業者が価格や品質などの取引条件をある程度自由に変更できたりする場合だ。

 そのうえで公正取引委員会は優越的地位の乱用につながる主な行為を例示した。例えば、プラットフォーム事業者が利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得した場合だ。Webサイトの閲覧履歴や携帯端末の位置情報など、それだけでは誰の情報か識別できない情報であっても個人を識別して利用する場合は消費者に知らせずに取得するのは問題になるとした。

 プラットフォーム事業者が利用目的の達成に必要な範囲を超えて消費者の意思に反して個人情報を利用する場合も、優越的地位の乱用に該当する。具体的にはプラットフォーム事業者が個人情報の利用目的について「商品の販売」と特定して消費者に示していたのに、商品の販売に不要な性別や職業に関する情報を消費者の同意なく取得した場合や、ターゲティング広告に個人情報を利用する場合を挙げた。

 これまで個人情報を取り扱う企業に対する法制度は個人情報保護法が中心だった。今後はプラットフォーム事業者に対して複数の法制度にまたがった複合的な規制がかかることになる。

プラットフォーム事業者に対する法制度
プラットフォーム事業者に対する法制度
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 公正取引委員会が独占禁止法でプラットフォーム事業者などの企業に対して個人情報の扱い方の規制を強化するのは、従来の法制度の枠組みでは解消できない問題が生じているからだ。

 プラットフォーム事業者の消費者問題に詳しい千葉恵美子名古屋大学名誉教授は「(プラットフォーム事業者の行為は)それぞれの法令によって保護される個人や社会の利益に関わる」と語る。プラットフォーム事業者の行為の中には、独占禁止法や個人情報保護法などが保護する利益と衝突する一方、現行の枠組みでは違法性を問いにくいものもある。このため、それぞれの法制度の枠組みを変えてプラットフォーム事業者に規制をかける必要があるというわけだ。

 GAFAなどのプラットフォーム事業者は巨大なITインフラで複数のサービスを提供している。サービスの間で働く「ネットワーク効果」などの経済法則および企業や消費者から得る膨大なデータを利用して、企業間の競争を抑えて独占的な状況を作り出しやすい。企業の間に反競争的な状況が広がると、新たなイノベーションの創出や生産性を向上させる取り組みを妨げて消費者の利益を損なう恐れが高い。

 プラットフォーム事業者は自ら定めた利用規約や自ら設計したコード(アルゴリズム)によって、プラットフォームに参加する企業や消費者の行動に影響を与えている。規約に反したとみなした企業や消費者を排除したり、検索結果の順位などを下げたりする支配力もある。

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