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 2019年6月、米フェイスブック(Facebook)が新デジタル通貨構想「Libra(リブラ)」をぶち上げるやいなや、世界中で大きな話題を集めたことは記憶に新しい。グローバルに使える初の仮想通貨と期待される一方で、既存の金融システムを不安定にする恐れなどから、世界中の金融当局が強い警戒感を示しているのも事実だ。

 Libraは今後どうなるのか。また規制当局はどうLibraと向き合うべきなのか。元日銀審議委員であり、著名エコノミストの野村総合研究所(NRI)木内登英エグゼクティブ・エコノミストが語った。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト
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 NRIは2019年12月19日、「リブラ~世界を震撼させるデジタル通貨革命~」と題した記者向けの説明会を開いた。ここで木内氏が繰り返し強調したのが「金融当局は大きな社会的意義を持つLibra構想を潰すべきではない」という言葉だ。

 木内氏は「私は賛否どちらの立場でもない」と前置きした上で、「(Libraのような)デジタル通貨に社会的意義があることは誰も否定できない事実。Libra構想を潰すのではなくいかに受け入れるか、そのための規制をどう決めるかが重要だ」と強調した。

銀行口座を持たない「アンバンクト」は世界に17億人いるとされる
銀行口座を持たない「アンバンクト」は世界に17億人いるとされる
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 ここで言うLibraの社会的意義とは主に、銀行口座を持たない層(アンバンクト)への金融サービスの提供を指す。アンバンクトは世界に約17億人いるとされるが、そのうちの3分の2は携帯電話を持つとされる。

 Libraを使えばこれまで銀行サービスにアクセスできなかった新興国の低所得者などが、「低コストの送金」など金融サービスを享受できるようになる訳だ。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)もLibraの意義を「Financial Inclusion(金融包摂)」と繰り返し強調している。

日本の現金関連コストは年間15兆円超に上る
日本の現金関連コストは年間15兆円超に上る
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 Libra実現によるメリットは先進国にもある。現金比率が高い日本のような国にLibraが浸透すれば、キャッシュレス化が進み現金に関わるコストの抑制が期待できる。NRIによると、貨幣をつくって保管し流通させるなど、日本の「現金コスト」は年間15兆円超に上るという。キャッシュレス化により社会全体のコストを低く抑える効果が見込める訳だ。