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 地震被害からの復旧作業が早まる可能性が出てきた。貢献するのはGIS(地理情報システム)ソフトの販売を手掛けるESRIジャパンが2020年1月8日に公開した、スマートフォンなどを使って住宅の被害状況をリアルタイムで登録・確認できるツール「応急危険度判定調査(訓練版)テンプレート」である。開発に当たっては建築研究所が協力した。

応急危険度判定調査をするアプリの画面。調査フォームは建物の構造の違いに対応し、木造と鉄骨(S)造、鉄筋コンクリート(RC)及び鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の3種類に分かれている
応急危険度判定調査をするアプリの画面。調査フォームは建物の構造の違いに対応し、木造と鉄骨(S)造、鉄筋コンクリート(RC)及び鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の3種類に分かれている
(出所:ESRIジャパン)
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 応急危険度判定調査とは、余震で建築物が倒壊して二次災害が発生するのを防ぐため、自治体が建築物の危険度を判定する調査である。一定の講習を受けた応急危険度判定士が現地を訪れて調査する。「赤は危険、黄色は要注意、緑は調査済み」を示す3色の紙を住宅に貼って、住民に危険度合いを知らせる。

応急危険度判定の張り紙
応急危険度判定の張り紙
(出所:日経アーキテクチュア)
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調査効率を2倍に高める

 建築研究所は1995年の阪神大震災以降、応急危険度判定調査を支援するツールの研究に取り組み、iPhoneやiPadに調査結果を入力するツールを2013年に公開した。紙の調査票は集計に調査と同じぐらいの時間がかかってしまうが、デジタルツールを使うとそうした手間を省けるため、1日当たりの調査件数を約2倍に増やせるという。位置情報をGPSで取得するため、土地勘のない人でも迷わずに調査できるメリットもある。

 新ツールは3つで構成する。地図を作製・利用するためのクラウド GISサービスの「ArcGIS Online」、入力するためのスマホとタブレット用アプリ、そして調査フォームを作るためのテンプレートである。このうちクラウドとアプリは既に提供していたものを使う。

 新ツールの特徴の1つは、被害状況を地図上ですぐに確認できる点だ。これまで建築研究所が公開してきたツールは被害状況を自動で地図上に可視化する機能を備えていなかったが、新テンプレートにより、記録の集計から地図上での可視化までをワンストップで支援するようになった。