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 国内の大手金融機関のトップに「理系出身」の波がやってきている。2020年4月には三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)で初の理系トップが生まれる。同社だけでなくメガバンクグループでも初だ。

 少子高齢化、超低金利、FinTechの進展――。金融機関を取り巻く収益環境の移り変わりが激しい。各社は数字やITに強い理系人材をトップに据え、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させようと模索している。

デジタル知見「国内随一」のトップ誕生

 「デジタルに精通しており、国内の金融機関で彼の知見は随一だろう」。2020年1月17日に都内で社長交代会見に臨んだMUFGの三毛兼承社長は2020年4月から後を託す亀沢宏規副社長をこう持ち上げた。

2020年4月に三菱UFJフィナンシャル・グループ社長に就く亀沢宏規副社長(2019年4月19日撮影)
2020年4月に三菱UFJフィナンシャル・グループ社長に就く亀沢宏規副社長(2019年4月19日撮影)
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 「金融機関に限らず、あらゆる産業はデジタルの流れに乗らないと沈んでしまう」。こう危機感を漏らす別のMUFG関係者は亀沢副社長を次のように評する。「DXを実現するには(科学や技術、工学、数学、芸術を融合した)STEAMが欠かせないが、亀沢はそれを持ち合わせたリーダーだ」。

 亀沢氏の経歴はメガバンクグループのトップとして異色だ。東京大学大学院理学系修士課程を修了し、1986年に三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。為替や債券の売買を担う市場部門が長く、直近はMUFG副社長として、デジタル事業を統括している。

 さらにMUFGが高速データ通信を手がける米アカマイ・テクノロジーズ(Akamai Technologies)と共同で立ち上げた米グローバルオープンネットワーク(Global Open Network)のCEO(最高経営責任者)も兼務している。同社はMUFGとアカマイが共同で開発した新しいブロックチェーンを使って、2020年前半に日本での商用の決済プラットフォームとしての稼働を目指している。

 亀沢氏は社長交代会見の席で、今後のDXの進展を見据え「次のビジネスモデルをどう作るかが最大の課題」と力を込めた。まずは2021年度から始まる次期中期経営計画の策定を急ぐ考えを示した。