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 東芝は2020年1月21日、原理的に盗聴が不可能とされる「量子暗号通信」を2020年度に商用化すると発表した。まず米国で政府機関や金融機関などに売り込み、実績を作ったうえで日本を含めたグローバルで事業を展開する考えだ。日本企業として初の商用製品となる。

東芝が開発した量子暗号通信の伝送装置
東芝が開発した量子暗号通信の伝送装置
(出所:東芝)
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RSA暗号は2030年ごろに破られる?

 既存の暗号技術は計算量が多い数学問題をベースとしているため、コンピューターの計算性能が高まるにつれて解読されるリスクも高まっている。例えば素因数分解の計算量の多さを使って解読されにくくしているRSA暗号は、2030年ごろに現行の2048ビットでも解読リスクが顕在化する。つまりスーパーコンピューターなどを使えば破られる可能性が出てくるとされる。。

 既存の暗号技術にとっての新たな脅威は、素因数分解を高速に解ける量子コンピューターの開発競争である。 一方、量子暗号通信は後述の通り動作原理が異なるため、コンピューターの計算性能がいくら高まっても解読のリスクは高まらないとされる。

 東芝は量子コンピューターの開発競争などを背景に、より安全な量子暗号通信への需要が拡大し、2035年には世界で200億ドル(約2兆2000億円)という巨大な市場が形成されると見込む。先んじて製品を投入することで、政府機関だけでなく幅広い法人需要を開拓し、市場のリーダーの座を狙う構えだ。

 裏を返せば、量子暗号通信が2兆円の巨大市場を作るための2つのハードルも見えてくる。法人需要を呼び込めるように低価格化を図れるかと、そもそも既存の暗号技術にどれだけの解読リスクが顕在するのか、である。

盗聴を検知し、鍵データを安全に共有

 量子暗号通信は量子力学の原理を使うことで、第三者の盗聴を検知できる点が特徴だ。秘匿したいデータの送受信には弱いレーザー光を使う。「光子」と呼ぶ光の最小構成単位である素粒子の状態に、ビットの「0」「1」を対応させて暗号鍵のデータを送受信する。

 第三者が通信経路の途中で光子を観測(盗聴)すると、光子は観測の影響を受けて必ず状態を変化させる。状態が変化するのを検知したらその秘密鍵のデータは廃棄し、盗聴されていない鍵データだけを使ってデータ本体を暗号化して送受信する仕組みだ。

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