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 クルマの技術展「オートモーティブワールド2020」(2020年1月15~17日、東京ビッグサイト)に合わせて、米マイクロソフト(Microsoft)が自動車向け戦略説明会を開催、ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)や、同ダイムラー(Daimler)、同BMWのいわゆる“ジャーマン3”のユーザー事例を相次いで公表した。コネクテッドカーを通じて収集したデータを分析し、最終的にデジタルプラットフォーマーへの転換を目指すジャーマン3にとって、マイクロソフトは欠かせないパートナーになっている。

マイクロソフトのサンジェイ・ラヴィ氏
マイクロソフトのサンジェイ・ラヴィ氏
(撮影:日経Automotive)
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 「自動車メーカーは今やソフトウエア会社になりつつある」。マイクロソフトGeneral Manager, Automotive Industryのサンジェイ・ラヴィ(Sanjay Ravi)氏は会見でこう述べた。自動車業界が直面する大変革「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」を勝ち抜くためには、ソフトウエアが大きな強みになるからだ。

 実際、自動車業界におけるソフトウエア技術者の数は「機械系の技術者の約3倍の速度で増えている」(ラヴィ氏)という。例えば、米フォード(Ford Motor)では「ソフトウエア開発のプラットフォームである『GitHub』を利用する開発者が約8000人存在する」(同氏)。またクルマ1台当たりの車載ソフトウエアのコード数は1億5000万行規模に膨らんでいる。

 ソフトウエア重視の動きは、フォードをはじめとする米国メーカーのほか、ドイツ車メーカーで積極的だという。例えばVWはグループ横断型のソフトウエア専門組織「Car.Software」を立ち上げた。2025年までに70億ユーロ(120円/ユーロ換算で約8400億円)を投じてソフトの内製比率を現在の10%未満から60%に高める計画である(関連記事)。

VWとシアトルで協業

 VWは独自の車載ソフトウエア基盤「vw.OS」と対をなすクラウド技術の戦略パートナーにマイクロソフトを選んでいる。Car.Softwareの拠点の一つは、マイクロソフトの本社がある米国シアトルにあり、ここで協業を進めているという。

VWはクラウド分野でマイクロソフトと提携
VWはクラウド分野でマイクロソフトと提携
(出所:マイクロソフト)
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 VWが利用するマイクロソフトのソリューションは、クラウド「Azure」をベースにした「Microsoft Connected Vehicle Platform(MCVP)」である。これは次世代の車内体験や自動運転、ナビゲーション、顧客エンゲージメント、テレマティクス、接続性/OTA(Over The Air)など、約40のメニューから成るクラウドサービスで、自動車メーカーは必要な機能をカスタマイズして利用できる。

MCVP
MCVP
(出所:マイクロソフト)
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 VW以外ではフランス・ルノー(Renault)、日産自動車、三菱自動車の3社アライアンスもMCVPを採用している。また、MCVPに関しては内装大手のフランス・フォルシア(Faurecia)がマイクロソフトとの協業を2020年1月の「CES」で発表した。

ルノー・日産・三菱のアライアンスも採用
ルノー・日産・三菱のアライアンスも採用
(出所:マイクロソフト)
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 会見では日本の自動車メーカー、特にトヨタ自動車との協業に関する質問が相次いだ。ラヴィ氏は「トヨタとはAzure関連で協業している」と述べるにとどめ、詳細は語らなかった。ただ、「今後は日本の自動車メーカーとの協業案件が増える見通し」(同氏)と語った。

自動運転の開発にも「Azure」

 マイクロソフトは自動運転車の開発環境としてもAzureを提供している。自動運転の開発車両が収集するデータは1日当たりペタ(1000兆)バイト級にも上るため、クラウド上に大容量のストレージが必要になるほか、人工知能(AI)の学習やシミュレーション、アルゴリズム検証などにも多大な演算能力が求められる。

 自動運転車の開発にAzureを活用した事例としては、ドイツ・アウディ(Audi)を紹介した。「すでに8ペタバイト規模のデータでシミュレーションを実行しており、今後数年間で200ペタバイト級まで増える見通し」(ラヴィ氏)という。こうした巨大なデータの取り扱いには拡張性に優れたAzureが欠かせないという。

アウディは自動運転車の開発環境にAzureを活用
アウディは自動運転車の開発環境にAzureを活用
(出所:マイクロソフト)
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 開発環境では、さまざまなツールを利用できることも重要になる。マイクロソフトは多くのツールベンダーと協業し、Azure上でさまざまなツールを自由に組み合わせられる“ツールチェーン”を提供している。今回のオートモーティブワールドではドイツ・コンチネンタル(Continental)のソフトウエア子会社である同エレクトロビット(Electrobit)との協業について紹介した。