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 車載OS「QNX」を手掛けるカナダ・ブラックベリー(BlackBerry)は、人工知能(AI)を使った自動車向けセキュリティー技術を、クルマの技術展「オートモーティブワールド2020」(2020年1月15~17日、東京ビッグサイト)で展示した。

 ブラックベリーはセキュリティー技術を手掛ける米サイランス(Cylance)を2019年に買収済みである(リリース関連記事)。サイランスの技術はパソコン(PC)向けなどで実績があるが、自動車にも応用できるという。

 通常のセキュリティーソフトはデータベースに登録された既知のマルウエアを排除する仕組みのため、未知のものには対処できない。これに対し、サイランスの技術はプログラムの特徴や振る舞いをAIが学習して危険性を予測するため、未知のマルウエアも検出できる。実際、「WannaCry」のようなマルウエアが登場することを19カ月前に予測した実績があるという。なお、AIはディープラーニングではなく、数式ベースの機械学習を使っているとのことだった。

マルウエアの出現を予測
マルウエアの出現を予測
(出所:ブラックベリー)
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 AIが学習する対象はプログラムに限らず、運転者の特徴や“癖”も学習できる。ステアリングの切り方やアクセル/ブレーキペダルの踏み方などを車載ネットワークを通じて収集し学習させると、運転しているのが誰なのか識別できるという。運転者が信頼できる人物でないと判断すると、クルマの所有者のスマホに警告を送ったり、クルマを減速、停止させたりできる。

運転の特徴や癖から運転者を識別
運転の特徴や癖から運転者を識別
(出所:ブラックベリー)
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 クルマの盗難防止に役立つほか、車の所有者やその家族が運転する場合でも眠気や体調不良などによる運転プロファイルの変化に気付ける。車載カメラや専用ハードウエアなどを使わずに、低コストで運転者監視システム(DMS)を実現できる。個人所有の乗用車以外では、トラックやタクシーの運転者の疲れを把握し、業務の割り当てを最適化するといった使い方も想定している。

異常を検知すると管理画面から車両を減速、停止させたりできる
異常を検知すると管理画面から車両を減速、停止させたりできる
(出所:ブラックベリー)
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 この技術は「CylancePERSONA」として製品化している。自動車向けの提案はこれからで、まだ採用事例はない。コネクテッドカーを使ってクラウド上で学習・判定できるほか、オフラインの車載システム側でも判定できるという。

振る舞いによる認証はクルマが先行か

 CylancePERSONAはパソコンやスマホを操作している人物を識別する用途にも使える。例えば、ネットバンキングの操作をしている人物が本人かどうかを判定するといった用途である。しかし、パソコンやスマホの操作の場合、操作方法が用途によって変わりやすく、個人ごとの違いを判別することが難しいという。これに対し、クルマの運転では個人の差が出やすく、高い精度で本人を識別できるため、自動車向けでの実用化が先行しそうだという。

CylancePERSONAの仕組み
CylancePERSONAの仕組み
(出所:ブラックベリー)
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 サイランスの技術はこのほかにもある。「CylancePROTECT」という製品は、さまざまなマルウエアの特徴を学習させて作った予測・検知モデルを使い、プログラムを実行する前に静的に危険性を判定する。マルウエアのデータベースを持つ必要がないため、ソフトが小規模で済み、車載システムに搭載しやすいという。すでにWindowsやMac、Linux向けの製品があり、Androidなどのアプリを使う車載インフォテインメント(IVI)向けにも展開する。

 「CylanceOPTICS」という製品は、CylancePROTECTで防ぎきれなかったものに対して、プログラム実行時の振る舞いから危険性を判定するものだ。この振る舞い検知技術をユーザー認証向けに応用したのがCylancePERSONAである。

 ブラックベリーは、サイランスの上記3製品と、自社のバイナリースキャン製品「BlackBerry Jarvis」、OTA(Over The Air)管理サービス「BlackBerry OTA Software Update Management Service」、統合管理コンソール「Vehicle Operations Center」などを組合わせたセキュリティーソリューションを提案している。

セキュリティーソリューションの全体像
セキュリティーソリューションの全体像
(出所:ブラックベリー)
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