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 2019年12月にカナダのバンクーバーで開催された、世界的に有力なAI(人工知能)の国際学会「NeurIPS」には、一線級のAI研究者やエンジニア、ユーザー企業の担当者などが集まった。会期後半にはAIによるタスクの解決を競うコンペティションが2日間にわたって繰り広げられた。日本勢では東京大学や金沢大学の研究者が入賞した。

 コンペのプログラムは16種類あり、2018年の8種類から倍増した。全体で約4000チームが参加し、1万5000回の投稿をしたという。プログラムには与えられた課題をバーチャル空間上で解くものから、実際にサーキットで模型を走らせて競うライブ型などがある。

 プログラムを目的別に大別すると、クルマやロボット、ドローンなどの操縦を自動化するものと、マラリアの撲滅や気象予測などビッグデータをAIで分析することによって社会課題を解決するもの2つがある。前者はゲームの形態をとるものが多い。また音声認識や画像認識のディープラーニング(深層学習)モデルを自動生成して精度を競う「AutoDL」というコンペもあった。

 コンペはAIの応用力を試す格好の場であり、NeurIPSのほか画像認識の有力学会CVPR(Conference on Computer Vision and Pattern Recognition)で発表された著名論文のモデルを活用する参加者も多い。上位の成績を残した参加者がどのような工夫をしたのか。日本人受賞者の動向を中心にみていく。

NeurIPSで行われた自動運転のライブコンペ
NeurIPSで行われた自動運転のライブコンペ
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東大・加藤研の村松氏は自動運転の物体検出で3位に

 東京大学大学院情報理工学系研究科の加藤真平准教授の研究室に所属する修士課程の学生である村松佑亮氏は、道路上の物体を光センサーなどのデータから予測するするコンペ「3D Object Detection over HD Maps for Autonomous Cars」で3位に入賞した。

 このコンペは、米ライドシェアリング大手のリフト(Lyft)が自動運転の実現に向けて試験走行させている自動運転車のセンサーデータやカメラで撮影した動画、地図を使用して、自動運転車用の3次元物体認識技術を競うもの。参加者はリフトが提供したデータを使って、道路上の対向車や標識などを識別できる機械学習モデルを開発する。

 「多くのエンジニアが使った物体を把握する『PointPillars』という予測モデルのパラメーターをチューニングしたが、これだけではうまくいかないと思った。他にいいモデルを見つけ、組み合わせて予測して結果に結びついた」。村松氏はそう語る。

授賞式に参加した東大の村松氏(左)とリフトの責任者
授賞式に参加した東大の村松氏(左)とリフトの責任者
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 松村氏はPointPillarsに加えて、米アップルの研究者が公開した予測モデルである「VoxelNet」を利用した。少ない量のセンサーデータで物体を把握できるという。PointPillarsはCVPR 2019で、VoxelNetはCVPR 2018でそれぞれ発表されている。

 村松氏が所属する東大・加藤真平准教授の研究室は、自動運転システムの研究で知られる。まさに専門分野での受賞となり「今回使ったアプローチは、自動運転車で一般的に利用できるものであり、今後の研究に生かしていきたい」(村松氏)。

金沢大チームは「Minecraft」のコンペで入賞

 今回のNeurIPSでは日本の大学生チームが健闘した。金沢大学大学院の修士課程で学ぶ西尾大智氏らのチームは「MineRL Competition」で6位に入賞した。人気ゲーム「Minecraft」をプレーするAIエージェントを開発するコンペだ。ゲームの映像やゲームから出力されるログデータを分析して、AIエージェントを開発する。

授賞式に参加した金沢大チームの西尾氏
授賞式に参加した金沢大チームの西尾氏
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 具体的には、ゲーム内で武器や道具を作るために必要な「ダイヤモンド」を探し当てるのが課題である。まず木製のアイテムを作り、それを活用して石や鉄のつるはしなどを作り、最終的に鉱山でダイヤモンドを掘り当てるといったように最終タスクをクリアする。

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