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 2022年ごろから自動車メーカーがジェイテクトのラミネート型高耐熱リチウムイオンキャパシター(以下、高耐熱キャパシター)を採用する(図1)。用途は、電動パワーステアリングの補助電源だ。

図1 高耐熱キャパシター
図1 高耐熱キャパシター
ラミネートタイプ。電動パワステの補助電源として自動車メーカーが2022年ごろから採用し始める。(写真:日経クロステック)
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 ジェイテクトが持つ現行の電動パワステのラインアップは「Eセグメント」向けまで。それ以上の大型車種にはモーターの出力が足りず、電動パワステを使えない。そこで、高耐熱キャパシターを補助電源に使い、出力を補う*1。これにより、「Fセグメント」、すなわち大型SUV(多目的スポーツ車)やピックアップトラックにまで電動パワステを使えるようにする(図2)。

*1 出力向上の仕組みはこうだ。電動パワステは12V電源を使う。この電圧を高耐熱キャパシターを使って18Vに昇圧。これをモーターに印加し、電流を一定のまま出力を18/12=1.5倍にまで高める。
図2 高耐熱キャパシターの用途
図2 高耐熱キャパシターの用途
現行の電動パワステの適用範囲は出力的にEセグメントまでが限界。そこで、高耐熱キャパシターを補助電源に使って出力を増やし、電動パワステのラインアップをFセグメントまで広げるのがジェイテクトの狙い。(出所:ジェイテクト)
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85℃でも劣化せず、冷却システムが不要に

 ジェイテクトの高耐熱キャパシターの特徴は、その名の通り、耐熱性に優れること。動作温度範囲は-40~85℃と、「自動車メーカーが車室内搭載部品に要求する仕様を満たす上、(使用期間が)15年、(走行距離が)20万kmの耐久性を備える」(ジェイテクトBR蓄電デバイス事業室室長の西幸二氏)*2

*2 耐熱性を向上できた理由は、「新しい材料を採用したのでなく、電池メーカーとは異なるアプローチから相性の良い材料を見いだした」(西氏)からだという。

 従来のキャパシターは熱に弱く、60℃を超えると劣化が激しくなるため、冷却システムが必要だった。その分、コストも消費エネルギーも増え、システムも大型化してしまう。これに対し、高耐熱キャパシターは冷却システムが不要になるため搭載性が高い。コスト的にも優位になるとみられる。

 先の自動車メーカーの採用計画に合わせ、ジェイテクトは高耐熱キャパシターの量産を開始した。生産するのは、花園工場第4工場 (キャパシタ棟、愛知県岡崎市)。30億円を投じ、生産能力が48万セル/年の生産ラインを新設した。2019年10月にサンプル出荷向けの生産をスタートさせ、2020年1月23日時点(取材時)で6万セル/年まで生産量を増加。今後は10億円を追加投資し、2023年度に生産能力を100万セル/年まで引き上げる。2024年度に売上高を25億円以上に伸ばし、単独黒字化を目指す考えだ。

材料を混ぜ、塗り、積層して、活性化する

 図2が、高耐熱キャパシターの構造。穴の開いたアルミニウム合金箔に活性炭が付いた正極と、同じく穴の開いた銅箔に黒鉛が付いた負極、セパレーター、銅箔に金属リチウムが付いたリチウム箔を重ね合わせて積層体を作製。正極にはアルミ合金製正極タブを、負極には銅にニッケルめっきを施した負極タブを接合する。このタブ付き積層体に、有機溶媒にリチウムイオン化合物の電解質を溶かした電解液を加えて、アルミ合金と樹脂で出来たラミネートフィルムで封止した構造となっている。

図3 高耐熱キャパシターの構造
図3 高耐熱キャパシターの構造
(出所:ジェイテクト)
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 高耐熱キャパシターの造り方は、大まかには材料を混ぜ、それを箔に塗ったものを積層した後、活性化して仕上げる。具体的には[1]混練、[2]塗工、[3]切断、[4]乾燥、[5]積層、[6]タブ付け、[7]ラシミール、[8]注液、[9]ドープ、[10]エージング、[11]ガス抜き、[12]性能検査、[13]リーク検査、の13工程から成る(図4)。以下、具体的に見ていこう。

図4 高耐熱キャパシターの生産工程
図4 高耐熱キャパシターの生産工程
大まかには混練と塗工、積層、活性化の工程から成る。詳細には合計13工程を経て造られる。ジェイテクトの資料を基に日経クロステックが作成。
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