これまで見えにくかった微小な血管が造影剤なしで鮮明に見える――。ベンチャー企業のLuxonus(ルクソナス)は光超音波技術を用いて微小な血管などを3次元(3D)画像として撮影する製品を開発している。同社はキヤノンや日立製作所、京都大学、慶応義塾大学などが参画した国の研究プロジェクトの技術を実用化するために発足した。
現在は細い血管をコンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)で撮影する場合、造影剤を体内に注入することが多い。Luxonusの光超音波技術を利用すれば、血管は造影剤を使わなくても画像化できる。光超音波技術は、生体にパルス光を照射した際に発生する超音波をセンサーが受信し画像化する。血管の場合はパルス光で赤血球中のヘモグロビンが光を吸収し、赤血球が熱膨張して発生した超音波を受信する。
高い解像度にできた理由の1つはおわん型に配置したフィルム状のセンサーだ。国の研究プロジェクトで開発された。「ノイズを下げ解像度を上げるようなセンサーの配置方法をあみだした」とLuxonusの八木隆行CTO(最高技術責任者)は話す。
装置に手をかざすと5分程度で手のひらの血管を撮影できる。「造影剤が不要でしかも直径0.2mmほどの血管まで映せる。これほど細い血管を撮影できる装置は他にない」と医師でLuxonus社長の相磯貞和氏は話す。
血管の撮影に関しては、乳がんの検査や治療に利用できる可能性がある。検査では既存の検査装置であるマンモグラフィーや超音波検査との併用が考えられるという。がん細胞は正常細胞よりも多くの栄養が必要となり、がん細胞の周囲に新しい血管をつくる。「光超音波技術による撮影で判明した血管が多く集まる場所と、マンモグラフィーや超音波のがんの画像とを比較して乳がん診断の精度を上げられるとみている」とLuxonusの八木CTOは話す。治療時の利用では、がん細胞の周囲に血管をつくらないようにする医薬品の治療効果の評価に応用できる可能性がある。