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 新規参入が相次ぎ利用者獲得を激しく競うスマートフォン決済に、とうとう淘汰の波が押し寄せてきた。2020年1月23日、メルカリが傘下のメルペイを通じてスマホ決済分野の老舗、Origamiを買収すると発表した。生き残りをかけたスマホ決済事業者の競争は激しさを増しそうだ。

3期連続の赤字に沈んだ老舗

 Origamiは2012年の設立で、キャッシュレス決済ブームが起こる前の2016年にQRコード決済サービスをいち早く開始した。オープン路線を志向し、同社の決済機能を他社のアプリに組み込めるSDK(ソフトウエア開発キット)を公開。スマホ決済のプラットフォームを目指してきた。

 独立系として地道に加盟店を開拓し、スマホ決済の裾野を徐々に広げてきたOrigamiだが、LINEや楽天、さらにソフトバンクとヤフーが共同で手掛けるPayPayなどネット大手の参入でスマホ決済を巡る情勢は体力とスピードがものを言う世界に一変した。メルカリが公表した資料によると、Origamiの直近3年の業績は赤字続き。営業赤字額は2016年12月期が6億8900万円、2017年12月期が13億600万円、2018年12月期が25億4400万円と拡大する一方だった。

 そんなOrigamiを買収したメルカリの狙いはスマホ決済事業のてこ入れだ。スマホ決済はメルカリが現在最も力を注ぐ事業の1つである。

 国内向けフリマ事業、米国向けフリマ事業と合わせた重点3事業に注力するため、メルカリはこの1~2年、事業の選択と経営資源の集中を進めてきた。2019年6月には自転車シェアサービス「メルチャリ」からの撤退を発表し、同事業を手掛ける子会社を清算した。2018年には英国事業から撤退している。

遠因はヤフー・LINEの経営統合

 メルカリをOrigami買収に突き動かしたものは何か。加盟店の共同開拓に向けた企業連合「Mobile Payment Alliance(MoPA)」の解散が、背中を押した可能性がある。

 MoPAはLINE傘下のLINE Payとメルペイが2019年3月に設立した任意団体で、後にNTTドコモとKDDIが加わった。しかし設立から9カ月後の2019年12月、活動終了を突然発表した。

 理由は「LINE Pay側の今後のサービス方針転換」(発表文より)である。LINEは2019年11月、PayPayを傘下に持つZホールディングスとの経営統合を発表したばかりだ。

 「MoPAの趣旨に賛同する企業を今後も募る」(メルペイの青柳直樹社長)、「協力して日本を真のキャッシュレス社会にしたい」(LINE Payの長福久弘取締役COO=最高執行責任者)――。当初、参加各社は意気込んでいたが、理想はあっけなくついえた。MoPAの解散により、メルペイは独力で加盟店を開拓せざるを得なくなった。

加盟店アライアンス「Mobile Payment Alliance(MoPA)」のメンバーだったLINE Payの長福久弘取締役COO(左)、NTTドコモの田原務プラットフォームビジネス推進部ウォレットビジネス推進室室長(中)、メルペイの青柳直樹社長(右)
加盟店アライアンス「Mobile Payment Alliance(MoPA)」のメンバーだったLINE Payの長福久弘取締役COO(左)、NTTドコモの田原務プラットフォームビジネス推進部ウォレットビジネス推進室室長(中)、メルペイの青柳直樹社長(右)
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メルカリ、地方攻める

 Origami買収はその「弱点」を補う。Origamiが全国の中小企業への販路を持っているためだ。

 同社は2018年9月、信金中央金庫(信金中金)と業務提携した。信金中金は信用金庫のセントラルバンクとして、全国約260の信用金庫を会員に持つ。その信金を通じて、Origamiは地域の小規模な小売りや飲食、サービス業に同社のスマホ決済「Origami Pay」を導入してきた。メルカリはこの販路を引き継ぎ、地域の中小事業者に「メルペイ」を普及させる。

 ただその前途は平たんではない。メルペイの利用者数は500万人(2019年10月時点)。サービス開始が2019年2月と後発だった面はあるが、2000万人の「PayPay」、3690万人の「LINE Pay」に水をあけられている。

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