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 高回転時と高トルク時で磁界の状態を変化させる――。自動車部品のエクセディは、運転状態に応じて磁束を変える新発想のモーターを開発した。自動車で採用が広がるスターター兼発電機(ISG:Integrated Starter Generator)として使う。エンジン関連部品を主力にする同社にとって、電動化に備える切り札になり得る。今後、早期の受注を目指す。

エクセディが試作した可変磁束モーター
エクセディが試作した可変磁束モーター
写真左が開発品で、ドーナツ形状である。右はドーナツの穴にエクセディの主力商品であるトルクコンバーターを組み込んだ様子。(日経クロステック撮影)
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 「可変磁束」と呼ばれる新しい方式に基づくモーターの一種で、かねて研究はあるが、自動車用で本格的な量産を目指す開発事例は珍しい。モーターの小型化と大トルク化の両立を狙って同方式を採用した。具体的にはエンジンを始動したい時に磁束を増やし、高回転時には磁束を増やすのをやめる。この機構によって、減速機を使わない「ダイレクトドライブ」を実現する。

界磁コイルで「パワーブースト」

 開発品はオルタネーター(発電機)の機能とともに、エンジン出力軸に力を加える始動モーター(セルモーター)の機能を備える。ベルトを介さずに力を直接加えられるため、極低温(-30℃以下)の環境で動作できる特徴がある。既存の始動モーターを完全に代替し、コストを抑えられるという。ベルトを介さないと効率を高められる利点もある。

スズキのISGはベルト駆動
スズキのISGはベルト駆動
軽自動車用エンジンに搭載する。三菱電機製で、ターボ車用の最大トルクは50N・m、最高出力は2.3kW。(日経クロステック撮影)
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 例えばスズキが軽自動車で採用するISGは、ベルト式である。極低温環境ではベルトの摩擦が大きくなり始動できなくなる可能性がある。ISGに加えて従来ある始動モーターを別に搭載する必要があった。なお、スズキを含む一部の自動車メーカーはISG搭載車を「マイルドハイブリッド車(簡易HEV)」と呼ぶ。

 エクセディは、開発品の動作電圧を自動車で標準の12Vに抑えた上で外形寸法を小さくしながら、最大トルクが50N・m前後と小型車の始動トルクとして十分な水準を実現した。モーターの形状はドーナツ型で、直径250mm×幅77mmと薄い。同社の主力商品であるクラッチやトルクコンバーターをドーナツの穴に組み込む構造にして、全体で小さくできるようにもしてある。