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 アンシス・ジャパンは2020年2月5日、同社のシミュレーションツール群「ANSYS」(米アンシス)の新バージョン「ANSYS 2020 R1」での機能強化概要を明らかにした。車両自動走行システム開発向けの比較的新しいツールと、既存の構造解析・流体解析・電磁気解析などのシミュレーションツールの両面で機能を強化した。それぞれユーザー層が異なっており要望も別々で、アンシスに限らず総合的なCAEベンダーは2正面での対応を求められるようになっている。

外乱へのロバスト性を考慮

 自動走行システム開発者は、アンシスにとって比較的新しいユーザー。完成車メーカーの担当部門の他、自動走行システム開発に特化した子会社、センサーを開発する部品会社など。アルゴリズムを開発していく上で「物理量の評価が関連する場合にシミュレーション担当者との接点が生じる」(アンシス・ジャパン)が、基本的にこれまでのシミュレーションのユーザーとは担当が異なる。

 ANSYS 2020 R1で加わった機能は、例えばカメラで得た画像を人工知能で認識する際の弱点を検証する「SCADE Vision」。これまでの「SCADE」が組み込みソフトの開発効率化とセキュリティー確保の支援を目的としていたのに対して、SCADE Visionは認知ソフトの評価を専門とする。歩行者が背景の電柱と重なる位置関係になった瞬間に、センサーからの画像にノイズがのったら認識結果がどうなるか、といった検証を実行する。

 モデルベースの安全分析ツール、すなわち構造モデルと挙動モデルに基づく故障モード影響分析(FMEA、Failure Mode Effect Analysis)、故障ツリー分析(FTA、Fault Tree Analysis)などに利用するツール「medini analyze」では、これまで機能安全規格「ISO26262」に準じた分析に対応していたのを拡張し、策定中の「ISO21448(SOTIF)」「ISO21434(サイバーセキュリティー)」にも対応する。ISO21448は外乱によるセンサーの誤作動などの考慮、ISO21434はハッキングなどの外部からの攻撃への考慮のため、欧州を中心に策定が現在進んでいる。

 この他、走行シミュレーションツール「VRXPERIENCE Driving Simulator & Sensor」では、ミリ波レーダーの挙動をROM(縮退モデル)にして、シミュレーションへの利用を可能にした。従来版はカメラとLIDARまでだった。シミュレーション中に、さまざまなケースを仮想的につくり出すシナリオ機能も強化した。同社は「CES 2020」(2020年1月7~10日、米ラスベガス)で自動走行システム開発に関して米ブラックベリー社との提携を発表するなど、パートナーとの提携も強化している(図1)。

図1 ANSYSによる自動走行システムの支援ツール
図1 ANSYSによる自動走行システムの支援ツール
自社ツール開発とパートナー獲得を急いで進めている(出所:アンシス・ジャパン)
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