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 世界の自動車市場にブレーキがかかった。世界の新車販売台数(以下、世界販売台数)が2017年に9680万台まで伸びたものの、以降は失速。2018年に9506万台に落ち、2019年は落ち幅がさらに大きくなる見込みだ。

 こうした逆風が吹く中で、トヨタ自動車は世界販売台数を増やしている。グループではなく同社単体、いわゆる「トヨタ車」の2019年の世界販売台数は971万台に達した。実に、8年連続の前年超えだ。自動車業界は世界中の競合企業がしのぎを削る、典型的な「レッドオーシャン」。すなわち、血で血を洗うと形容されるほどの激しい“生存競争”が繰り広げられている業界だ。そうした環境にあっても、着々と販売台数を稼いでいるのがトヨタ自動車なのである。

逆風をついて販売台数を伸ばすトヨタ自動車
逆風をついて販売台数を伸ばすトヨタ自動車
世界の自動車メーカーの販売台数(左軸)は2017年をピークに失速している。だが、トヨタ自動車は2019年まで8年連続で世界販売台数を伸ばしている。(出所:トヨタ自動車)
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 だが、自動車の開発や生産の方法は標準化が進んでおり、多少の違いはあっても世界中の自動車メーカーが同じようにクルマを造っている。同じ車格で見ると、搭載している技術も価格も似たようなものだ。にもかかわらず、「なぜトヨタ車ばかりが売れるのか?」──。かねて筆者が感じていたこの疑問に対する“回答”を、トヨタ自動車副社長のディディエ・ルロワ氏が2020年3月期(2019年度)第3四半期決算発表の席で披露した。

世界のどの市場でも満遍なく選ばれている

 2019年の世界販売台数を見ると、アジア・オセアニア(日本と中国を除く)市場の販売台数が落ちたものの、他の市場は全て前年を超えている。世界のどの市場でも満遍なく売れていることが、トヨタ車の最大の特徴だ。

 なぜトヨタ車はほぼ全世界で選ばれているのか。ルロワ副社長の回答を一言で表現すると、「顧客にトヨタ車の魅力を伝える当たり前の活動を、愚直に進めてきたから」ということになる。同副社長は世界の4大市場、すなわち[1]中国市場、[2]米国市場、[3]欧州市場、[4]日本市場、のそれぞれでトヨタ自動車が進めてきた具体的な活動を紹介した。

販売台数を増やすためにトヨタ自動車が世界4大市場で展開した活動
販売台数を増やすためにトヨタ自動車が世界4大市場で展開した活動
ルロワ副社長が語った。(作成+写真:日経クロステック)
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中国市場は「値下げを避けた」

 [1]の中国市場は2017年から減速しており、これが世界の自動車市場にブレーキをかけた主因となっている。2019年に中国市場は前年比で8%減少したのに対し、トヨタ自動車は販売台数を9%増加させることに成功した。

 その一因は、新型「カローラ」と「レビン」の好調な販売。モジュラーデザイン「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」を採用し、走行性能を高めた。この特徴を販売員の一人ひとりが顧客に丁寧に説明し、体感してもらえるように力を入れた。加えて、安易な値下げを回避し、中古車価格が下がらないように努めたという。こうした活動により、中国市場の顧客に「クルマの品質の高さや燃費効率、性能に加えて、リセールバリューも(トヨタ車の)魅力だと感じてもらえるようになった」(ルロワ副社長)。

中国市場の販売台数
中国市場の販売台数
中古車価格の下落を防ぐために値下げをやめつつ、TNGAプラットフォームの採用で走行性能を高めた。結果、中国市場が縮小する中で、トヨタ車の販売台数を増やした。(出所:トヨタ自動車)
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